光王子と月夜のシンデレラ
あまりにも綺麗な星空が広がっていたので佐倉さんにも教えようと思ったら、彼女もすでに俺のように寝転がって空を見上げていた。
彼女は妙なところで思い切りがいい。

「綺麗……そっか、今日は七夕でしたね」
「あーそういえば」
「天の川みたいですね」
「さすがに天の川じゃないだろ」
「もう、ムードが台無しじゃないですか!私が天の川って言ったら天の川なんですよ!……私が奇術って言ったら奇術なように」
「ジャ●アンかよ……」

まだまだ悩みは消えないし、何なら奇術なんて信じられないし、佐倉さん以外の人に話す気にもなれない。
特待生を目指していいのかとも未だに思う。
けれど、どこか気持ちが軽くなって、何かが少し変わった気がする。


「七夕ってロマンチックですよね。織姫と彦星も会えましたかね」
「年に1回なんて辛すぎるだろ」
「え……?」
「いや、だって好きならもっと会いたいし、一緒にいたいでしょ」
「……い、今宮くん……そういう感情あったんですね」
「俺を何だと思ってるんだよ……」

チラリと隣を見ると、なぜか赤くなっている佐倉さんと目が合う。
するとすぐに彼女は目をそらし、再び夜空を見上げた。

彼女の中では、俺と恋愛感情は結び付かないってこと……なのか?
その事実が、俺の中の何かをかき立たせる。


ゴーンゴーン――

聞き慣れた鐘の音が聞こえる。魔法が解ける時間がやってきた。
でも今日は、俺からは帰ろうかと言ってあげない。

「帰らないと!」

すぐに彼女はそう言って、体を起こした。

「星空も綺麗ですけれど、ここから見るみなとみらいの夜景も綺麗ですよね」
「うん、わかる」
「万国橋といい勝負だな~」
「万国橋?」
「はい、汽車道の方です。ロケ地とかにも結構なっていて……今度そっちも行ってみましょうか」
「ああ」

約束ができた。同級生との約束は初めてかもしれない。
先日より夜風が生ぬるくなってきた。夏はもうすぐそこだ。
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