光王子と月夜のシンデレラ
◆月の章③真夜中の肝試し
楽しいバーベキューも終わり、夜のお楽しみ……肝試し。
班ごとに、コテージから約500m先にある別の空きコテージを目指し、そこに置いてある懐中電灯を取って帰ってくるというものだ。

バーベキュー後、一旦各自部屋に戻り、21時となった今、また再集合している。

「500mって絶妙な距離だよね~近いようで、こうして歩いてみると意外とあるっていうか」
「う、うん……でもドキドキして楽しいね」

今までなら絶対嫌だったこういうイベント。
でも新菜ちゃんのおかげで、楽しんで参加している私がいる。

1本道ではあるけれど、木々に覆われ暗い道であるため、視界は悪い。
どこから脅かし役の先生たちが出てくるか……ドキドキしながら歩いている。

ガサッ――

「ひいぃ!」
「あはは!佐倉、いい反応だなぁ」

有名アニメの電気ネズミの格好をした田中先生が茂みから出て来た。
いや……なかなかクオリティの低い仮装で……
出てきたことに驚いたというよりは、その仮装の怖さに驚いてしまったんですよ……

「大丈夫?」
「あ、ごめんなさい!」

驚いて後ろずさった時に、今宮くんにぶつかってしまった。
私の背中に今宮くんの腕の温もりを感じる。

「え……まさかお風呂入ってきた?」
「あ、はい」
「風呂はこの後の予定じゃ……」
「バーベキューのにおいが気になっちゃって。ほら、私鼻が利くので……」
「いや、無防備すぎでしょ……」
「大丈夫ですよ!あがってからそれなりに時間経っていますし、湯冷めの心配はないですよ」
「はぁ……そういうことじゃない……」
「むっ……私がいつお風呂入ったっていいじゃないですか。ま、まあ、予定ではこの後ですけど……」
「なんであんたはいつも……」

今宮くんが言いかけたところで私はハッとした。
……まずい、班のみんながいるんだった。

今宮くんも気がついたようで、少し気まずそうな顔をしている。
どうしよう……みんなに今宮くんの素が……

「ぷっ!なに、今宮ってそんな感じなの?」
「あ……」
「いいじゃん、その方が距離が近い感じで好きかも」
「うん、人間ぽい」

成沢くんと松永くんは笑いながら今宮くんを受け入れている。
心なしか、今宮くんもホッとしたような笑顔を浮かべている。

元々周りに人が多い今宮くんだけれど、成沢くんたちとの関係はこれからもっと良い方に変わっていくのかもしれない。

和やかな空気の中、再びみんなでコテージへ向かい始めた。

その後も何人か脅かし役の先生たちが出てきたけれど、私たちの班はみんな冷静な反応をして、先生たちを悲しませてしまったのだった。
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