光王子と月夜のシンデレラ
「いただきます……」

今宮くんから逃げ出しそのまま学食へ来た。
残り少ないお昼休み、何としてもご飯は食べないと。

「あれ……なんか味変わった……?」

大好きなオムライスプレートを頬張りながら、少しの違和感を感じる。

まぁ学食だしいつも同じってことはないか……何なら、私もこんな状態だし勘違いかもしれな……

「さっきぶり。ここ、空いてる?」

ひぃぃ!私をそんな状態にしている張本人がやって来た。
逃げて来たのに……なんで。
それにキラキラ王子と学食ランチなんて周囲の目が気になって、より味が変になってしまいそう。

「ほ、他にも空いている席があるのでは……」
「ちょっと話したいなって、佐倉さんと」
「ひっ……」

さっきの無表情とは違い、今度はキラキラ笑顔。
全力で逃げ出したいけれど、ここは窓際。
今宮くんの後ろを通らないと教室へは帰れない……詰んでいる。

「ひ、ひとつ……席の間を空けてもらえると……」
「ん、わかった」

一つ空きの隣同士。
これなら、顔を見て話さない限り、たまたま席が近くなった2人としか見えないだろう。

今宮くんのトレーには素うどんとラムネだけ。
え、もしかしてお昼それだけ……

「コードネームNo.30……」

のんきにそんなことを考えていた時、今宮くんは食器に視線を落としたまま呟いた。

…………!

その言葉に私の体はわかりやすくビクッと震えてしまった。

「……」

知らないふりをしたり、反論したりしたいけれど、口も体も動かない。
この人には通用しないと、本能がわかっているようで、全身で圧を感じる。

ものすごく長く感じた沈黙の後、再度今宮くんは口を開く。

「……身に覚え、あるってことかな?」
「……」
「今日の17時、みなとみらい駅改札で」
「なっ……!」

反射的に今宮くんの方に顔を向けてしまった。
けれど、その時にはもう今宮くんは席を立っていて、遠くに小さな後姿が見えるだけだった。

やっぱり……昨日のは……

はぁ……今まで学校も「クエスト」も、気が重いと思うことはなかったのだけれど……
重い腰がなかなか上がらず、完食後も休み時間ギリギリまで学食でボーっと窓の外を眺めていた。
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