光王子と月夜のシンデレラ
「あら、あの絵画は初めて見るわね」
「さすが奥様、お目が高い。あちらはルネサンス期の……」

「ちょっ……ちょっと、今宮くん!何ですかここは……」
「ん?芸術鑑賞ギャラリーという名の、絵画の商談会だね」
「ええっ!?なぜそんなところに……」
「まあ、作品を見る場所なのに金儲けの話が飛び交うなんて悪趣味だよな」
「そ、そういうことを言ってるんじゃ……!」

あれから私は、しいちゃんがいた部屋からすぐの所にある、みなとみらいエリアのホテルの広間に連れてこられた。
昨日、今宮くんを助けた場所の近くである。
広い部屋の壁一面にたくさんの絵画が飾られ、フロアにも彫刻などの芸術作品が数多く並んでいて、美術館のような空間だ。

招待状があって最低限のドレスコードを守ってさえいれば、高校生以上の誰もが自由に出入りできるようで、なぜかそんな招待状を持っていた今宮くんと一緒に入場した。
もちろん、高校生以上であるフリをして。

そのためのしいちゃんの変身か……と少し繋がる点はできたものの、なぜ2人でここにいるのかは謎のまま。
ただ老若男女問わず結構な人数がいて、私たちもその中の1組として溶け込み、悪目立ちはしていないと思う。

……まあ、今宮くんはスーツにネクタイという格好で、いつも以上にカッコよく決まっているため、女性陣からの視線は痛いほど浴びているけれど……ひぃっ。

それでも今宮くんから離れるわけにはいかないので、一緒に会場内の絵画を見て回る。
特に会話もないまま……今宮くんは全然キラキラ王子ではなく、むしろ闇王子だけれど。
意外とこの方が緊張もしないし、一緒に居やすいななんて思っている。


しばらくして、会場の奥の方に飾られている1枚の絵画の前で今宮くんは足を止めた。

茜色の夕焼け空のふもとに、白い花が咲いている風景画。
他の作品よりも長い時間をかけて、この絵をジーっと見つめている。

「……この絵、どう思う?」
「えっ、どうって……花が赤色に照らされているのがきれいだなって……」
「きれいすぎるよね」
「へ?」
「……これ、多分偽物」
「……えっ!?」

しっ!っと、視線は絵のままに、今宮くんは唇に人差し指を添える。なんだそのカッコいい仕草は。

「この赤、本物は絵の具が酸化してもっと黒っぽくなっているんだ。こんなに鮮やかじゃない」
「で、でも……こんなちゃんとした会場に展示してあるのものが偽物なんて……」
「どこにでも、いくらでもあるよ。そしてこのタッチ……恐らくAIで作った偽物」
「AIって……まさか……」
「うん、俺たちの「相手」の可能性が高いね。もしかしたら昨日のヤツらがやったのかもしれないし」
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