光王子と月夜のシンデレラ
「そっか……昨日の……」
「あれ、否定しないんだ。「昨日のことって?」とか言うもんだと」
「だって今宮くん、もうわかっているじゃないですか!無意味な抵抗はしませんよ」
「ははっ、賢いね」
「……佐倉さん、昨日のこ……」
「おや、この絵が気になるかね」

振り向くと、そこに居たのは50代くらいの男性だった。

「……そうですね」

警戒している様子から今宮くんの知り合いではなさそうだけれど、ひとまず今宮くんはその男性の問いに答えた。

「若いのに珍しいね、こういう場に来るなんて」
「まあ、芸術鑑賞が好きなので」
「そうか、嬉しいね……そちらのお嬢さんもそうなのかな」

ひぃっ……突然私に視線が移り、体がビクッとしてしまう。
ど、どうしよう……私が高校生ではないってバレてないかな……
下手なことは言えない……でも黙っていて無視するわけにも……どうすれば……

「彼女なんです。2人とも芸術分野に興味があるので、デートがてら」

……!?

空耳かな。か、か、彼女なんて……まさかね。

ぐいっ――

そう思っているのもつかの間、今宮くんは私の腰に軽く触れ、自分の方へ寄せた。
ひいぃ……近い近い……!お、王子が私に触れている……!

「今この空間では、キミは俺の彼女。いいね?」

今宮くんは耳元でコソっと囁いた。
片方の耳だけがものすごく熱を持っていて、頭の中はグツグツ沸騰しそうだ。この人は声までいいのか。

「ほ~若いっていいね、仲良くね」
「ありがとうございます」

放心状態の私を傍らに2人でそんな会話をし、男性が去ろうとした時――

きゃぁああああ!――

入口の方から女性の悲鳴が聞こえてきた。
< 9 / 70 >

この作品をシェア

pagetop