かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「だから絶対に見失いません。万一のためのものですけど、持っていてくれると僕が安心なので」
「それはもちろん、身につけます」

 もちろん、と言われてダニールはホッと微笑んだ。
 間もなくマルーシャたちとダニールは別行動になるかもしれない。それでも自分との絆となる物をマルーシャが身に着けていてくれたら頑張れる気がした。



「――おまえ、ちょっとは考えろ」

 イグナートと二人で部屋に引き取ったダニールは、友人から小言をくらった。

「何かいけなかったか」
「傷の治り方とかはさあ……嫌がる人もいるんだよ。マルーシャちゃんは怖がる方みたいだな」
「え……脅かすつもりなんかなかったんだが」
「それはわかってるよマルーシャちゃんだって。あとおまじない、何するか説明してからやれ。いつもボッチで研究してるからって、人といる時は気をつかわないと」

 とにかく言葉が足りないダニールにイグナートは次々駄目出しする。自分の行動を振り返って考え、ダニールは口ごもった。

「……マルーシャさん、あきれただろうか」
「さあな」

 イグナートはしょんぼりするダニールを観察した。なんだか愁いをおびた視線を、先ほど傷つけて治した指先に落としている。
 ピンときた。まさか。

「おまえ、マルーシャちゃんのこと好きなのか」

 そのまんま尋ねたらダニールが硬直した。視線がおよぎ、イグナートを見ようとしない。反論しようとして息を吸うが、何も言えぬままに何度も吸い込むばかりで過呼吸を起こしかけた。

「落ち着けって、責めてねえから。むしろ喜ばしいぞ」
「――いや。彼女は、閣下の孫娘で、〈春〉で」

 ダニールは素直に気持ちを認められず言い訳する。気恥ずかしいより何より、これが恋愛感情だという確証がないので肯定できないのだ。ひたすらに面倒くさい男だ。

「そんなの関係ねえだろ。マルーシャちゃんだっておまえのこと憎からず思ってるから、とっとと告白しろって」

 バシンと背中を叩かれて、ダニールは情けなく咳込んだ。

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