かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
✻ ✻ ✻
――ファロニアからの返事は異例の早さで届いた。
「バーベリさんが来るんだと」
五人が部屋に揃い、報せを受け取ってきたイグナートの話を聞く。知らない名にマルーシャは首をかしげた。
「バーベリさん?」
「侯爵閣下の懐刀で、折衝とか書類仕事の人です――僕ら、まったく信用されてないな」
「わーかるー」
イグナートは大笑いする。
パーヴェル・バーベリ。実務担当でファロン侯爵が頼りにする人物だった。
これは妖精の秘密に関することであり、侯爵の娘が当事者であり――現地近くにいるのは、おまじないのダニールと剣のイグナートだけ。不安しかない。
イグナートは腕に覚えがあり、人間としては明るくていい男なのだが調子に乗りがちだ。ダニールだっておまじないなら頼りになるが、誘拐犯と会話で交渉できるとは思えなかった。別の担当者が来てくれるならその方がありがたい。
「他にもファロニア騎士団が数人。私服でひっそりザラエ入りするってよ」
「バルテリスと事をかまえたくないんだな」
あくまでメレルス個人との問題として処理する意向なのか。妖精族の内輪の事情を公にはできないので、その判断も理解できた。
だがルスラン夫婦の居所を探りあてたとして、外国でどう解決するのだろう。バーベリならば裏から町の有力者の弱みを握るぐらいしそうだと考えて、イグナートは小さく笑った。
「それでミュシカ。戻っておいでってお祖父さまが言ってるぞ」
「えー?」
一応イグナートは侯爵の望みを伝えた。でも案の定ミュシカは唇をとがらせる。
「やだ。わたしもおむかえにいくもん!」
「だよなあ」
そう言うだろうとわかってはいたが、困ったものだ。このままでは侯爵の命にそむく形になってしまう。雇われの立場としてはどうしたものか。
「……私とミュシカが勝手にザラエに向かったことにしましょ」
遠慮がちにマルーシャは提案した。
――ファロニアからの返事は異例の早さで届いた。
「バーベリさんが来るんだと」
五人が部屋に揃い、報せを受け取ってきたイグナートの話を聞く。知らない名にマルーシャは首をかしげた。
「バーベリさん?」
「侯爵閣下の懐刀で、折衝とか書類仕事の人です――僕ら、まったく信用されてないな」
「わーかるー」
イグナートは大笑いする。
パーヴェル・バーベリ。実務担当でファロン侯爵が頼りにする人物だった。
これは妖精の秘密に関することであり、侯爵の娘が当事者であり――現地近くにいるのは、おまじないのダニールと剣のイグナートだけ。不安しかない。
イグナートは腕に覚えがあり、人間としては明るくていい男なのだが調子に乗りがちだ。ダニールだっておまじないなら頼りになるが、誘拐犯と会話で交渉できるとは思えなかった。別の担当者が来てくれるならその方がありがたい。
「他にもファロニア騎士団が数人。私服でひっそりザラエ入りするってよ」
「バルテリスと事をかまえたくないんだな」
あくまでメレルス個人との問題として処理する意向なのか。妖精族の内輪の事情を公にはできないので、その判断も理解できた。
だがルスラン夫婦の居所を探りあてたとして、外国でどう解決するのだろう。バーベリならば裏から町の有力者の弱みを握るぐらいしそうだと考えて、イグナートは小さく笑った。
「それでミュシカ。戻っておいでってお祖父さまが言ってるぞ」
「えー?」
一応イグナートは侯爵の望みを伝えた。でも案の定ミュシカは唇をとがらせる。
「やだ。わたしもおむかえにいくもん!」
「だよなあ」
そう言うだろうとわかってはいたが、困ったものだ。このままでは侯爵の命にそむく形になってしまう。雇われの立場としてはどうしたものか。
「……私とミュシカが勝手にザラエに向かったことにしましょ」
遠慮がちにマルーシャは提案した。