かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
 ダニールが眉をひそめる。

「マルーシャさん? 何を言って」
「乗り合いの馬車とかありますよね? 私たちはそれで抜け出すの。みんなが気づいて追いかけて、見つけたんだけど戻るのも遠いし、て感じ。それなら仕方ないですよ」

 イグナートもラリサも呆気にとられた。みえみえの芝居な気もするが、ミュシカならばやりかねない絶妙な線ではある。

「私たちは孫娘だもの。少し怒られたっていいわよね」

 マルーシャはミュシカを見て笑った。そう言えば、この姫たちは他の三人とは立場が違う。ミュシカは決意をこめてうなずいた。

「がんばる。おじいさま、おこるとこわいけど」
「そうなの? 初対面なのに怒られるのはちょっと嫌だなあ。でもミュシカが頑張るなら私も我慢しようっと」
「いや、マルーシャさん。乗合馬車なんてそんな」

 うろたえて反対したダニールに、ケロッとマルーシャは言い返した。

「違いますってば。言い訳はそういうことにしましょうね、てだけで。本当にやったりしませんよ」
「え……?」

 マルーシャに当然の顔をされてダニールはまだ首をかしげている。融通のきかない男だ。もし首尾よく交際が始まったとしてもマルーシャは苦労するなとイグナートはため息をついた。

「ま、それでいくしかないか。マルーシャちゃんもミュシカも、考えようによっちゃすごい戦力だし。頼むね」
「……荒っぽいことになると思いますか?」
「なるんじゃないかなあ。ならメレルスとダニールの一騎討ちより、お姫さまたちがいる方が有利だろ」

 それには同意しかねる、とマルーシャは思った。妖精の力に目覚めたばかりの自分と、五歳児。むしろ足手まといかも。
 だけどミュシカの気持ちはよくわかるのだ――いなくなってしまった両親を迎えにいきたい、という。
 その願いをかなえるための戦いを思って、マルーシャは武者ぶるいした。

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