かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
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 翌朝、マルーシャとミュシカは連れだってヴェデレの宿を出た。しばらくして、あわてた様子のイグナートとラリサが馬車で発つ。
 ……そんな一芝居を念のため打ってみた。ダニールはもちろん最初から、かりそめの妻と娘の後を尾け護衛していたのだけど。

「たぶん、いらない一幕だったと思うのですが」
「面白かったからいいじゃないですか」

 苦々しい顔のダニールに、マルーシャとミュシカは回収された馬車の中で大笑いした。二人にしてみれば街外れまでの朝の散歩だ。気持ちよかった。

「これは私たちのいたずらなんだものね、ミュシカ」
「ねー、お母さま」

 ノリの良い二人にダニールは困ってしまった。ミュシカだけでも手を焼いていたのに、これでは。
 だけどマルーシャのその明るさ、いつでもめげない強さがまぶしくて、ダニールは「この人を失いたくない」と感じたのではなかったか。それを思うと強く叱れない。
 そういうのを世間では「惚れた弱み」というのだが、ダニールは自分の気持ちを伝える努力をあえて先送りにした。

 今はそれどころではない。
 自分がマルーシャを好ましく思っているらしいとは認めたが、すべては事件を片づけてからだ。

 グ、と唇を結ぶダニールにマルーシャは微笑んでしまった。こんな時には笑った方がいいのに真面目な人。
 行方不明の両親を探しにいくなんて、幼い子がやることじゃない。ミュシカはふとした拍子にまた泣いてしまうだろう。だから、楽しい道行きにしたい。
 できればダニールにも笑っていてほしいと思った。この人がいちばん喜ぶのは、おまじないの研究だ。マルーシャは姿勢を正した。

「メレルスとの対決に必要なおまじない、私たちに教えて下さい」
「――はい」

 ダニールは力強くうなずいた。
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