かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
 昨日から考えていた。マルーシャとミュシカができること。
 妖精としての力は強くても、おまじないを扱うことには不慣れな二人。メレルスとの対決に巻き込みたくはないが、もしそうなったならどう戦い、身を守るのか。
 それにはメレルスが何をしてくるかの予想が不可欠なのだが、いかんせん情報が足りなかった。わかっているのはおまじないを無効化する術に長けていることだけ。
 こちらのおまじないを邪魔させない。相手のおまじないを使わせない。そのためにやるべきことは何か。
 ダニールは方針を決めた。二人には細かいことよりも、大きくはたらく力をふるってもらおうと思う。

「ミュシカは〈冬〉らしく、マルーシャさんは〈春〉らしくいこうと思います」

 頼もしく断言するダニールに、二人は興味津々だった。


 そして馬車の中でくり広げられた講習会に、馭者台のイグナートとラリサは背すじをゾクゾクさせていた。
 彼らは妖精の力があふれ流れる気配には慣れている。ダニールとの付き合いが長いからだ。だがそれでも、車内からもれる力に肝が冷えた。

「……なんか、怖いわ」
「うーん、あいつら怒らせない方がいいな」

 おそらく抑えて試しているのだろうが、強い力を感じて落ち着かない。実際に小窓越しに冷気が漏れ出たのはミュシカのせいだろう。それがすぐおさまったのはどういうことだとか、訊いてみたいが聞きたくない気もする。

「ねえ、ダニールってマルーシャのこと好きって認めたんでしょ」
「認めたっつーか、なんつーか。ふんわりと?」
「まあ自覚はしたのよね。もし二人が結婚したら、夫婦喧嘩ってどうなるの」
「……」

 なんと恐ろしい。
 そんなことが起こったら、犬も食わないどころか犬がしっぽをまいて逃げるのだろうことは、わかった。


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