かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
あなたのためのおまじない

犯人を捜して

 ✻ ✻ ✻


「俺がメレルスを探ってくるから、みんなは留守番な」
「えー」

 かわいらしい抗議の声に、イグナートの口はへの字になった。
 ザラエの街に到着したのはもう暗くなってからだった。なのでその日はミュシカも大人しかったのだが、次の朝には初めての街にそわそわしている。
 おでかけしてもいい? と見上げるまなざしはイグナートから見ても可愛かったが、許可するわけにはいかない。

「俺は仕事だ。じゃあミュシカの護衛は誰がやる?」
「お父さま……?」
「ブッブー。誰もできませーん。ダニールはメレルスに面が割れてるから外出禁止!」

 悲しい顔のミュシカにそう言い渡すのはかわいそうだが仕方ない。
 ルスラン夫婦の行方をつかみかけていることをメレルスに知られたくなかった。せめてどこに捕らわれているのかぐらい探り出さないと、先に手を打たれたら振り出しに戻ってしまう。

「きょう、ずっとおやどなの?」

 ミュシカはしょぼんとした。
 宿の部屋に閉じ込めるなど、元気な子どもには酷かもしれない。わかっているがマルーシャは言った。

「今日はおまじないの練習しようか」
「うん……」

 冴えない返事にマルーシャは微笑む。

「じゃあファロニアに帰る?」
「……いや」
「そうよね。リージヤさんとルスランさんを見つけるためにミュシカは来たんだもの。なら、我慢できるかな?」
「できる」

 ふんす、と口を結んでミュシカは約束した。子どもの扱いがうまいな、とダニールは感心する。
 マルーシャはだてにおばさんを自認していない。長年近所の子どもたちの面倒を見、あしらってきたのだ。ダニールの尊敬の眼差しにマルーシャは振り向いた。

「どうしました?」
「あ、いえ。なんでも」
「はい……?」

 そしてわけもなく照れ合う。
 こんなのはたから見れば両想いでしかないのに何をグズグズしているんだろう。イグナートは馬鹿々々しくなってケッと毒づいた。ラリサが察して笑う。

「いいじゃないのよ」
「へいへい」

 ひょいと手をあげてイグナートは出ていった。ラリサは黙って見送る。
 言葉は少なくても通じ合う、この先輩夫婦の方をこそマルーシャはうらやましく思った。

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