かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
 メレルスは見知らぬ妖精族が邸近くにいることに不審を抱いた。
 見た目は人族と変わらないが、そのたたずまい、感じるかすかな力。妖精族だと確信する。

 今メレルスが荘園に閉じこめている女はファロニアの領主ファロン侯爵の娘で、しかも〈冬告げの姫〉だ。実際は〈冬〉ではないが、メレルスはそう信じていた。妖精族はその行方を必死で追っていると思う。
 あのいまいましいダニール・ジートキフを出し抜いて〈シェイディ コン ブラーデレ(持ち主へ導け)〉を邪魔してみせたのは痛快だった。だがもしかしたら、捜索の手が伸びたのかもしれない。通りで見かけただけとはいえ、その妖精族が何者なのか知る必要があるだろう。
 だがおまじないは使えない。遠くから見たにすぎない相手とつながることはさすがにできないし、何かできたとしても気づかれるだろう。おまじないにも制約があるのだった。
 なのでメレルスは地道な方法を選んだ。目と足で、尾行するのだ。


 ✻ ✻ ✻


「なーんか楽しそうだね、おまえら」

 イグナートが宿に戻ると、部屋でミュシカとダニールが向き合って座っていた。ミュシカはニコニコだが、ダニールは疲れた顔だ。

「僕は、そろそろキツいかな……」
「お父さま、おててあそびへたなの!」

 歌に合わせて決まった仕草で手を合わせる子どもの遊び。横でラリサが苦笑いしているので、たぶんイグナートも家でやらされたことのあるやつだ。意外と難しいんだよな、と同情した。

「今日はそんなことしてたのか」
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