かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
妖精。
物語だけの存在ではないなんて思わなかった。まさかマルーシャ自身、その血を受け継いでいるとは。
「あ、お父さんは人なんだよね?」
「そうだよ」
念のため確かめたらクリフトは笑った。人と妖精が結婚することも別に珍しくはないのだ。
「妖精といっても、人とそんなに変わらないんだ。人にもいろいろ差があるね? その程度のものなんだってさ」
人間だって足が速い者、頭の回る者などさまざまだ。その素質が子々孫々伝わることも多い。それと同じなのだと。
「……そんなものなの?」
「自分にできないことは、魔法のように見えるものだよ。僕のこの時計も、正確に時を計るなんて昔の人が見たら驚くさ」
釈然としないマルーシャを、クリフトは目を細めてながめた。娘の中に妻の面影を探すように。
「妖精は自然の力とつながる。そうダニールくんが言ってたろう? 本来なら人のものではない力を借りていたせいで、人ではないとされてしまっただけでね」
「元はそんなに違わないのか……」
「アレーシャを思い出してごらん。妙な生き物だったか?」
「お母さんはお母さんだったわよ」
所作がきれいだったし教養もあったのは、出自を知れば納得する。でもそれだけだ。普通に町にとけ込んで暮らしていた。
「だけどマルーシャがこの町で生きていくのに、妖精の血を引くなんて知らなくていいから黙ってた」
「……自分のことなんだから、知っておきたかったな」
「大人になれば話す気だったさ。よその子と違うなんて嫌じゃないか?」
「もう大人なんだけど?」
マルーシャはジトッと父親をにらんだ。でもその気持ちもわからないではない。クリフトにとって、マルーシャはいつまでも小さな娘のままなのだ。
アレーシャを病気で亡くしてからクリフトの時はゆっくり進んでいる。思い出にとらわれているせいで。工房で作り出す時計の針は正確でも、クリフト自身は過去に生きているのかもしれない。
「私が妖精だろうがなんだろうが、お祖父さんに会ってみたいのとファロニアを見てみたいっていうのは確定」
「えええ、マルーシャぁ」
「だってお母さんの故郷よ? 行ってみたいじゃない。私ベルドニッツを出たことないしね」
「そりゃまあ……」
「心配ならお父さんも行けば? たぶん駄目とは言われないんじゃないかな」
「いやあ……招かれたのはマルーシャだから……」
クリフトは目をおよがせてゴニョゴニョ言った。
物語だけの存在ではないなんて思わなかった。まさかマルーシャ自身、その血を受け継いでいるとは。
「あ、お父さんは人なんだよね?」
「そうだよ」
念のため確かめたらクリフトは笑った。人と妖精が結婚することも別に珍しくはないのだ。
「妖精といっても、人とそんなに変わらないんだ。人にもいろいろ差があるね? その程度のものなんだってさ」
人間だって足が速い者、頭の回る者などさまざまだ。その素質が子々孫々伝わることも多い。それと同じなのだと。
「……そんなものなの?」
「自分にできないことは、魔法のように見えるものだよ。僕のこの時計も、正確に時を計るなんて昔の人が見たら驚くさ」
釈然としないマルーシャを、クリフトは目を細めてながめた。娘の中に妻の面影を探すように。
「妖精は自然の力とつながる。そうダニールくんが言ってたろう? 本来なら人のものではない力を借りていたせいで、人ではないとされてしまっただけでね」
「元はそんなに違わないのか……」
「アレーシャを思い出してごらん。妙な生き物だったか?」
「お母さんはお母さんだったわよ」
所作がきれいだったし教養もあったのは、出自を知れば納得する。でもそれだけだ。普通に町にとけ込んで暮らしていた。
「だけどマルーシャがこの町で生きていくのに、妖精の血を引くなんて知らなくていいから黙ってた」
「……自分のことなんだから、知っておきたかったな」
「大人になれば話す気だったさ。よその子と違うなんて嫌じゃないか?」
「もう大人なんだけど?」
マルーシャはジトッと父親をにらんだ。でもその気持ちもわからないではない。クリフトにとって、マルーシャはいつまでも小さな娘のままなのだ。
アレーシャを病気で亡くしてからクリフトの時はゆっくり進んでいる。思い出にとらわれているせいで。工房で作り出す時計の針は正確でも、クリフト自身は過去に生きているのかもしれない。
「私が妖精だろうがなんだろうが、お祖父さんに会ってみたいのとファロニアを見てみたいっていうのは確定」
「えええ、マルーシャぁ」
「だってお母さんの故郷よ? 行ってみたいじゃない。私ベルドニッツを出たことないしね」
「そりゃまあ……」
「心配ならお父さんも行けば? たぶん駄目とは言われないんじゃないかな」
「いやあ……招かれたのはマルーシャだから……」
クリフトは目をおよがせてゴニョゴニョ言った。