かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
 ダニールは、マルーシャが持つ服に目をやった。

「洗濯ですか。こんな夜に」
「ミュシカの服にソースがはねていて……たぶん引っくり返した料理のです。染みにしたくないので」
「ああ……すみません、あなたは一日中ミュシカと一緒なんですよね。僕は夜ならひと息つけるのに」

 幼女相手に奮闘する日中を思い、ダニールは頭を下げた。

「明日の夜は、僕とイグナートがミュシカをみるとか、どうです」
「んー。父親でない男性に着替えを見られるの、ミュシカは嫌がると思います。あの子、私より女らしいところがあるから」
「そんな。あなたはとても素敵な女性だ」

 ダニールは真剣に反論してしまった。それが本心だから。
 強く、前向きで、努力をいとわない。そして心づかいにあふれ春のごとく笑う。こんな人が隣にいてくれたらという気持ちはふくれあがるばかりだ。ともにミュシカの相手をしながら、本当の夫婦として子どもを育てることになったらと妄想し変な汗をかいたりもしている。
 でもマルーシャは真っ直ぐにほめられて耳まで赤くなってしまった。

「……ダニールさんこそ、素敵です」

 洗濯物をぎゅっと抱きしめ、マルーシャにしてはかぼそい声で言う。そしてそのまま走って逃げた。恥ずかしすぎて。
 こんな言葉で気持ちは伝わらないと思う。でも言いたかった。マルーシャにとってダニールは立派な男性で、でも可愛くて、頼りないけど強くて、気になって仕方ない人。

 洗濯場に駆けこむマルーシャと、廊下に立ち尽くすダニール。どちらも照れながら、ほんの少し期待した。
 ――もしかして、好意を持たれていると思ってもいいのだろうか。

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