かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「メレルスしかいない――あいつの荘園は町の西だったな?」
「ああ」
「そちらに向かってると思う」
「――お守りか」
みずからの血に問いかけて、ダニールはうなずいた。
万が一のために贈ったペンダントが役に立ってしまった。まさかメレルスがマルーシャの存在を知っているとは。
世俗にうといダニールは、宿の下男下女が金次第でなんでもしゃべってしまうことなどわからない。ジートキフ夫人はお洗濯なさっています、と平気でもらしてしまうのだ。洗濯場を使わせてほしいと断りを入れたマルーシャの礼儀正しさが仇になった。
ダニールはサッと上着に袖を通した。
「すぐに追う」
「あ、ああ。だけどミュシカはどうする」
「わたしもいくの」
やや眠そうに細めた目でミュシカは言った。もう良い子は寝る時間――とはいえ、こんな事態で待たせていて眠れるわけもない。それにダニールの中で、ミュシカはもう戦力の一人になっていた。
「夜遅くなるけど、ミュシカも手伝ってくれるな?」
「うん。マルーシャお母さまをおいかければ、お父さまお母さまいるよね」
むん、とくちびるを結んでミュシカが気合を入れた。どうやら眠いというより決意の表情らしい。本当の両親を取り戻すために、幼女は戦う気なのだ。
「そうだ。きっといる」
急いでミュシカにも外套を羽織らせ、全員で馬車へ向かう。
ラリサが言うには洗濯場には争った跡などはなかったのだそうだ。血痕も。マルーシャは抵抗もせずに姿を消している。
もしかしたら、とダニールは考えた。
マルーシャはわざと従ったのではないか。誘拐されればメレルスの本拠地までダニールがお守りをたどることができる。そこにはルスランとリージヤもいるに違いない。すべてが解決する。しかし。
「そんなこと、僕が望むわけないだろう――」
ダニールは苦しげにつぶやいた。
マルーシャに何かあったらと思うだけで、ダニールの心は黒く塗りつぶされていくようだった。
「ああ」
「そちらに向かってると思う」
「――お守りか」
みずからの血に問いかけて、ダニールはうなずいた。
万が一のために贈ったペンダントが役に立ってしまった。まさかメレルスがマルーシャの存在を知っているとは。
世俗にうといダニールは、宿の下男下女が金次第でなんでもしゃべってしまうことなどわからない。ジートキフ夫人はお洗濯なさっています、と平気でもらしてしまうのだ。洗濯場を使わせてほしいと断りを入れたマルーシャの礼儀正しさが仇になった。
ダニールはサッと上着に袖を通した。
「すぐに追う」
「あ、ああ。だけどミュシカはどうする」
「わたしもいくの」
やや眠そうに細めた目でミュシカは言った。もう良い子は寝る時間――とはいえ、こんな事態で待たせていて眠れるわけもない。それにダニールの中で、ミュシカはもう戦力の一人になっていた。
「夜遅くなるけど、ミュシカも手伝ってくれるな?」
「うん。マルーシャお母さまをおいかければ、お父さまお母さまいるよね」
むん、とくちびるを結んでミュシカが気合を入れた。どうやら眠いというより決意の表情らしい。本当の両親を取り戻すために、幼女は戦う気なのだ。
「そうだ。きっといる」
急いでミュシカにも外套を羽織らせ、全員で馬車へ向かう。
ラリサが言うには洗濯場には争った跡などはなかったのだそうだ。血痕も。マルーシャは抵抗もせずに姿を消している。
もしかしたら、とダニールは考えた。
マルーシャはわざと従ったのではないか。誘拐されればメレルスの本拠地までダニールがお守りをたどることができる。そこにはルスランとリージヤもいるに違いない。すべてが解決する。しかし。
「そんなこと、僕が望むわけないだろう――」
ダニールは苦しげにつぶやいた。
マルーシャに何かあったらと思うだけで、ダニールの心は黒く塗りつぶされていくようだった。