かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~

館の奪還劇

  ✻


 夜の静寂に響いた馬車の音とかすかな馬の声に、館で眠ろうとしていたルスランとリージヤはハッとなった。メレルスはもう計画を実行したのだろうか。

「もう? 仕事が早いな」
「その能力、別のところに向ければいいのに」

 ガウンを羽織り、窓から外をうかがいながら夫婦はつぶやき合った。
 松明の灯りがチラリとしたが、よく見えない。玄関の方がざわめいているのでおそらく間違いないと思う。

「私たちが逃げる間もなかったわね」
「そうだな……」

 二人はここから抜け出してザラエの街に向かうべきか迷ったのだった。どこかの宿にいるはずのダニールを探して危険を報せようかと。
 そのためには物理的に窓を壊すなりして外に出、馬を奪うという強硬手段しかなかった。馬が無理なら歩くことになってしまう。その場合すぐに日が暮れる時間は危険すぎるという判断でこの日の決行を保留したのだった。まさかメレルスの方がこうも瞬時に動くとは。

 燭台を持ち、ルスランはそっと廊下に出た。
 すると玄関の方からも、揺れる灯りが近づいてきた。メレルスと、女性が一人。あれがダニールの妻という人なのか。ルスランはため息を我慢した。

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