かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
――マルーシャを見て、そんなことを思い出した。しかし自分との血のつながりには言及せずにリージヤは冷ややかをよそおう。
「この方の寝室はあるのかしら。こんな夜更けに騒がしい」
「おや、姫はご機嫌斜めですかな。私はこんなに楽しいのは久しぶりなのですが」
メレルスの笑みは愚劣な喜びに満ちている。顔をしかめるリージヤに満足そうにして、メレルスは隣の部屋の扉を開けた。
「こちらを使えるようにしておきましたので、どうぞ。今夜は遅いですからな、明日にでもゆっくりお話しになればよい」
隣室をマルーシャに指し示し、メレルスは悠々と去っていった。
おまじないを使おうなどと思わないことだ、とマルーシャは言い渡されている。自分の術に自信があるのだろう、監禁が破られるとは欠片も心配していないようだった。
メレルスが去るのを待って、ルスランはちょいちょい、とマルーシャを自分たちの部屋に招いた。マルーシャにだって話したいことが山ほどある。うなずいてついていくと、扉を閉めるなりリージヤに抱きしめられた。
「――初めまして、姪っ子さん」
震える声で、嬉しそうに言われた。母のことを覚えていてくれたのかとマルーシャも笑顔になる。でもルスランにはわからなかったようだ。
「どういうことだい? 姪っ子?」
「このマルーシャは、アレーシャお姉さまの娘なのよ」
「――ああ、ベルドニッツで人として暮らしているっていう! どうりで君と似ているけど――どうしてこんなことに? 兄さんの妻だなんて」
妻。ジートキフ夫人を名乗った嘘を思い出し、マルーシャは少し顔を赤くした。でも手短に説明する。