かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「メレルスのおまじない、破ってみます」
「破るって……あ、僕らも行くよ!」

 玄関に戻らなくては。でも近づいて平気なものか、やや自信がない。下手すると玄関が崩れそうな揺れ方じゃないか? 建物を壊しかねないなど、生真面目なダニールにしては強引すぎるやり方だ。どうしたんだろう。
 廊下を行くと、玄関に続く扉が閉めきられていた。

「ここだ」
「おまじない……ああ。ある、かも」

 マルーシャは扉の木製の部分に染み込んだ力を感じ取った。なるほど、木材はギリギリ自然の物だと。そのおまじないをやんわりとつかまえる。

カテナ ヨルダテーバ(力を喪え)

 言い聞かせるようにすると、スウとそれは消えた。

「うわ……!」
「嘘でしょ」

 驚く二人に、マルーシャは小さく笑った。
 ダニールに教えられたおまじない、その応用。文言を組み替えれば、いろいろ使える。

「いきます」

 一度深呼吸した。
 バン、と扉を開けると、玄関ホールにいたメレルスと家令のヨアニムが振り向く。
 そして同時に、バキバキィッと乱暴に過ぎる音が反対側から響いた。
 玄関の扉が砕ける。その向こうに――腕を突き出したダニールが、険しい目をして立っていた。

「マルーシャさん!」

 こちらを見つけて叫ぶ。見たことがないくらい怒っているようだ。
 マルーシャはちょっと後悔した。簡単にさらわれたのは間違いだったかもしれない。

 だがこうなったら突き進むしかなかった。ダニールもズンズンと入ってくる。
 マルーシャは信頼する教師ダニールを真っ直ぐに見つめ、うなずいた。

ザイン、クムディ メ サイルース(冬よ、力を貸して)!」

 かわいらしい声が玄関ホールに響いた。

 
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