かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
幼女の呼びかけにこたえ、空気が変わる。
冷涼が満ちる。冬が来る。
息を吸うとのどが痛いほどの温度まで、一気に冷え込んだ。
「な……!」
メレルスがキョロキョロうろたえる。
「ミュシカ……!」
マルーシャの後ろの廊下でリージヤが嬉しそうにつぶやいた。ダニールに隠れるように真実の冬告げの姫ミュシカがいて、冬の力を呼んだのだった。
そっと現れたミュシカは、メレルスの向こうにマルーシャを見つけて笑顔になる。
「マルーシャお母さま!」
「ミュシカすごいわ!」
練習では力を解放できなかった。
抑えつつ抑えつつ、息を合わせたのだ。
でも今のミュシカは違う。
マルーシャを取り戻すために、両親を救うために、心の底から冬に求め願った。
その寒さ。空気中の水が凍りキラキラと舞うほどだ。
冬は、存分にここにある。
ダニールは、メレルスに向かって手をかざし唱えた。
「ムスダーシュ!」
「ショズデーレ、カテナ ヨルダテーバ!」
即座にメレルスが叫び返す。ダニールのおまじないは消えた。かに思えた。
でもメレルスの大声の陰で、ミュシカが先につぶやいたのだ。〈ショズデーレ、シュクテ イ コリド〉。
さらに、マルーシャが重ねる!
「ショズデーレ、ブロシュターヴァ!」
と、メレルスがのどを押さえた。〈ムスダーシュ〉。
「ぐ……が……」
メレルスが崩れ落ちる。
「イグナート!」
「任せろ!」