かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
おまじないの専門家
✻ ✻ ✻
市場の真ん中、マルーシャは腕組みし林檎を見つめた。
これとポロ葱で豚肉を煮込んだら。
「いけるわ……!」
確信を持ってうなずく。
おいしくなるはず。奮発して肉も買おう!
「おやおやマルーシャ、気合が入ってるね」
アッハッハと笑う果物売りのおばさんは顔見知り。というか、市場の人は全員がマルーシャの保護者のようなものだった。頼りないクリフトに業を煮やした近所の皆さんが、マルーシャを総出で見守り育ててくれたのだ。
「今日は父さんの時計が納品だから、ごちそうにしようかなって」
「そうかい、よかったねえ」
あと、できればダニールたちにも振る舞いたい。これから旅に出て世話になるかもしれない相手だ。
「――お母さまぁー!!」
遠くで聞こえたはずむような声にマルーシャが振り向くと、走ってきたミュシカに飛びつかれた。
「ミュシカ! どうしたの?」
「おさんぽしてる!」
元気に答える後ろからダニールがせかせかと来た。少し怒った顔だ。それを市場の人々は意味深な視線でザワザワと見守る。
あのマルーシャを「お母さま」と呼ぶ、愛くるしい幼女。
上等な服を着た、不機嫌そうだが見てくれのいい男。
――これは事件だ!