かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~

二人の後始末

  ✻ ✻ ✻


ザイン、クムディ メ サイルース(冬よ、力を貸して)

 あの時、冬告げの姫ミュシカの力で場は冬に傾いた。
 ダニールの陰にいたミュシカが不意に唱えるおまじないを、メレルスは捉えられない。そこにダニールが重ねるのは〈ムスダーシュ(凍れ)〉――強められた冬にふさわしいものだ。

 もちろんメレルスはそれを打ち消そうとするが、その前にダニールの「凍れ」は眠らされている。ミュシカによって。
 おまじないは眠っているだけなのに、ダニールを阻止したとメレルスが誤解したところで、マルーシャが〈ムスダーシュ(凍れ)〉を揺り起こす。
ショズデーレ、ブロシュターヴァ(言葉よ目を覚ませ)

 時間差で効いたおまじないは、油断していたメレルスの――のどを凍らせた。


「そうやって術を封じ、無力化しました。すぐに解いたので大きな怪我はさせていません」

 メレルスの館で何があったのか、説明するダニールとイグナートの前で冷たい顔なのはパーヴェル・バーベリ。ファロン侯爵を実務で支える壮年の男だった。
 到着が一日早ければ、とバーベリは内心悔し涙にくれている。馬車を駆り、可及的すみやかにザラエまでたどり着いたはずなのに、

「すんません、夜中に終わらせました」

 イグナートに言われて殴りたくなった。
 だが限界を超えて眠りそうになりながら犯人を確保していた当事者たち。怒鳴るわけにもいかず、そこからは駆けつけた騎士団員と共に引き継いだのだった。
 その後ふらつきながら宿にたどり着いた彼らは、泥々に眠りこけたらしい。

 ザラエの街とどう交渉して丸め込むか。メレルスが所属する商工会上部の弱みは何があったか。
 考えながら遠路を来たのに、着いたら力わざで解決されてしまっていた。揉み消しに手間取るはめになり、非常に不満だ。
 だが、それより何より。

「ジートキフ……おまえ」
「勝手をして、たいへん申し訳ありませんでした」
「うむ。まあそうなんだが」

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