かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
 春告げ姫候補を探しにファロニアを発った時には、真面目で偏屈でぼんやりした男だと思っていた。それが女のために激怒して破壊行動をすると誰が思う。
 急に姪を預かることになり疲弊しているようだったので、気分転換も兼ねてベルドニッツ行きを命じてみたのだったが、まさかその相手に惚れるだと。
 イグナートの方から「いい雰囲気なんですけど、まだ正式に交際を申し込んでないと思うんで、ちょっと突っ込みは待ってやって下さい」とささやかれて天地がひっくり返るかと思ったバーベリだった。

 ソファに恥ずかしげに座っているマルーシャをチラ、とする。若さなりの愛嬌があるが、地味な女性だとバーベリは思った。母親のアレーシャは華のある姫君だったと記憶しているので、肩すかしを食らった気分だ。
 そんな風に思われているなど知らないマルーシャはすまなそうに言い訳した。

「ダニールさんを責めないで下さい。やりすぎたかもしれませんけど、私が心配かけたせいなので」
「確かに、やりすぎだな」

 しかめ面になるバーベリに、イグナートがヘヘヘと笑った。マルーシャもクスリとしつつダニールを確かめる。
 その微笑みは信頼にあふれ、花が咲き香るように感じ――そうだ、この人は〈春〉なのだとバーベリは思い出した。早く侯爵閣下に会わせて差し上げねば。
 パーヴェルは淡々と申し渡した。

「後始末はなんとかする。さっさとファロニアへ戻れ」

 そう聞いてフワッと嬉しそうに笑うマルーシャは意外なほど可愛らしい。バーベリは目を見張り、そして納得した。生き生きとした表情や心ばえが魅力的な女性だ。
 こんな孫娘が増えて閣下がお喜びになるな、とバーベリは微笑んでしまった。



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