かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
  ✻


「マルーシャお母さま、ダニールお父さま、かえっちゃうの?」

 バーベリの指示に従って翌日には宿を引き払う、と伝えたらミュシカがしょんぼりした。ミュシカは滞在を延長するそうだ。事件の被害者であるルスラン夫婦はザラエ側の捜査にもう少し協力が必要らしい。
 本当の両親の元に戻ったミュシカはその愛情をたっぷり浴びて幸せなのだが、すっかりなじんだマルーシャとも離れたくないのだった。マルーシャはうふふ、と笑った。

「ファロニアで先に怒られておくからね」
「やん、マルーシャお母さまかわいそう。いっしょにがんばるから、まっててよう」
「でも私、元々お祖父さんに会うために旅に出たんだもの。ファロニアに着いたらすぐに会いたいな」

 侯爵は「戻れ」という言いつけにそむいた孫娘たちを頭ごなしに叱るかどうか。そんなことはないだろう、とリージヤは微笑んだ。
 リージヤ自身は末娘だからか甘い顔をされた記憶が多い。アレーシャに出奔されてかなりこたえたらしいし、その忘れ形見のマルーシャに本当はずっと会いたかったはずだ。意地っ張りの祖父に思いきり甘えて孝行してほしかった。

「きっと父もデレデレになるわよ。安心して甘えてらっしゃい」
「――リージヤ叔母さん」
「今回は私の方が長く心配かけたものね……ごめんなさいって伝えておいて。すぐに叱られに帰るからって」
「――はい!」

 ふふ、と笑い合うマルーシャとリージヤ。この二人は姪と叔母なのだが――もしかしたら義理の姉妹になるのかもしれなくて、ルスランはワクワクしていた。
 カタブツの兄ダニールが女性を抱きしめるところなど、まさか見られると思わなかった。誘拐されて心配をかけた両親へ、こんなにすごい土産話はないと確信できた。
 だから兄さん、頑張れ。
 ルスランは心の中でこっそり声援を送った。

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