かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
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 ザラエ滞在最後の日、マルーシャとダニールは町で二人きりになった。イグナートとラリサに置いてきぼりにされたからだ。「子どもたちにお土産を買う」と言われては見送るしかない。
 ずっと一緒だったミュシカもおらず、二人だけ。こんな状態は初めてだ。どちらも何を言えばいいのかわからなくなって静かに町を散策してしまった。

「ダニールさん――」
「あ、ああ」

 さすがに沈黙に耐えかねて、マルーシャはポツリと呼びかけた。言っていないことがあるのを思い出したのだった。

「……あの時、すぐに来てくれて嬉しかったです。ありがとう」

 マルーシャは首に掛けたままのペンダントにそっとふれる。紅い石は隣を歩く人とつながったままだ。それでいいとマルーシャは思っている。
 あらためての礼にダニールは目を細めて照れくさそうに笑った。

「あたりまえのことです、約束しましたからね。でも――二度とやりたくないです」
「私だって」

 二人はやっと微笑み合った。
 今回のことは心臓に悪すぎた。消えた人を追いかけるなんて、そんな物語のようなことはダニールには向いていない。ただの学者なのだから。

 マルーシャを取り戻せてダニールは心底安堵した。だけどものすごく後悔もしている。公衆の面前で抱きしめるなどして嫌われたのではなかろうか。
 そしてマルーシャだって後悔している。勝手なことばかりして、手に負えないじゃじゃ馬だと思われたかも。

 まなざしを交わしながら揺れた互いの瞳。
 言いたいことが胸からあふれそうで二人は石畳に立ち止まる。

「あの――」

 口火を切ったのは意外にもダニールだった。
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