かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「――え?」
「だから、はい」
「え? え? いいんですか」

 自分から言い出したくせに慌てはじめるダニールがおかしくて、マルーシャは肩をふるわせる。じゃあどう答えればいいんだ。

「私も、あなたといたいです。あなたと一緒に、たくさんの春を迎えるの。とても素敵じゃないですか?」

 とびきりの笑顔でマルーシャはダニールを見上げる。
 そのまなざしにこもった心をちゃんと受け取ったのだろうか。ダニールはうなずいてくれた。

「――あなたとの春をすごせたら、とても幸せだと思います」


 それから二人は広場の隅にあるベンチに腰掛けた。
 たくさんたくさん、話したいことがある。想う人から想われるという奇跡に見舞われて、どちらもふわふわした気分だった。

「まずは、丁寧に話すのやめて下さい。ダニールさんは年上なんだし落ち着かないって前に言いましたよね」
「あ、うん。ならマルーシャさ……マルーシャも」
「ええと、ダニール……?」

 とんでもなくぎこちない。こんなところをラリサたちに見られたら、どれほどからかわれるだろう。
 だけどいくつもの春をともに歩いていくというのなら、それは結婚を視野に入れているということ。周囲にもカミングアウトするしかない。そう気づいた二人は同時に頭を抱え――そして笑った。
 一緒に感じ、一緒に笑えるのが嬉しくて、また笑顔になる。

「ダニール、最初会った頃にくらべてよく笑うようになった気がするの」
「それはマルーシャのおかげだと思うよ。あなたと……きみといると表情筋がほぐれる」
「なんですか、その言い方」
「マルーシャ、丁寧語」

 注意し、されて、また笑った。
 少しずつ、少しずつ。こうして馴染んでいけばいい。これからの二人を形づくるための時間は、たぶんまだたくさんある。

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