かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「今のは、身に着けていた物と持ち主のつながりをたどるおまじないです」
飛んでいくおまじないを追いながら、ダニールは説明してくれた。
妖精族は生活の中におまじないを取り入れているのだそうだ。さっきのはごく初歩の、簡単なものらしい。
「じゃあユーリィはみつかりますか?」
「たぶん。ただ、無事かどうかは保証しません」
「――そんな」
「だから急ぎましょう」
淡々とした態度ながら、ダニールもユーリィの身を案じてくれてはいるらしい。基本的に冷静なだけなのだと判断し、マルーシャはホッとした。一緒に旅に出るならばあまり冷たい人は嫌だ。
「マルーシャさんにも、おまじないが感じられたみたいですね」
「え、私?」
「何か変だと思ったんじゃないですか。視線がさまよっていた」
気づかれていたのか、さすが研究者。やはり観察されているとわかって気恥ずかしくなる。マルーシャは目を細めて向かう先をながめた。
「……今はよくわからないです」
「慣れていないからでしょう。はっきり世界の力とつながったことが、まだないのでは?」
「つながる……」
水、土、木々、風。
そしてそんなものの果てにある四季。
世界を彩るそれらとともに生きるのが妖精たちだ。
マルーシャがこのささやかなおまじないを感じ取ったことでダニールは期待を高めていた。ほとんど何も教えられないまま、ただの人として育ったはずなのに。マルーシャは強い力を宿しているのかもしれない。