かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「おまえ、ほんと不器用」
「うるさい」

 ダニールはギクシャクと横を向いてしまう。その前を女三人並んで歩きながら、ラリサは小声で言った。

「もうわかったかもしれないけど、ダニールは学者馬鹿というやつなの」
「はい……?」

 言われたマルーシャは曖昧な返事をした。
 意味はなんとなくわかるが、賛成も肯定もしづらい。こき下ろされているのは祖父侯爵からの使者だ。

「遠慮しなくていいのよ。ダニールったら頭はいいし研究熱心だけど、おかげで浮き世離れしてて人づきあいも会話も苦手。私たち以外あまり友人もいないわ」
「聞こえてるんだが」

 後ろからボソッと恨みがましい声がした。だがラリサはチラリと振り向くと余裕の微笑みで苦情をはね返す。

「ダニールはねえ、公の仕事はできるのよ。でも女性への礼儀とかは心配で。失礼があっても悪気は絶対にないから、教育するつもりで接してもらえると助かるわ」
「……なんかひどい言われようですね」
「お父さま、かわいそう?」

 間にいるミュシカは左右をきょろきょろ見上げていた。つないだ手をマルーシャはぶんと振る。

「ううん、立派に働いてきた人なのね。それにミュシカの先生までしてるなんて、すごいじゃない」
「マルーシャさん、包容力あるねー」

 後ろからイグナートの感心した声が飛んだ。
 それはそう。
 だってこちとら、クリフトみたいな父親を支えて長年暮らしてきたのだから!

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