かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
 大人四人がそろって振り向く。ミュシカはビクッとマルーシャにしがみついた。何か言い合う声が続いて聞こえ、クリフトにしては珍しく怒っているようだ。ダニールは席を立った。

「様子を見てきます」
「いや俺が行く」
「イグナートは見るからに腕が立つ。刺激するとまずいだろう。隠し玉になっていてくれ」

 言い置いて出て行こうとするが、マルーシャだってそういうわけにはいかない。

「私も行きます。ダニールさんだけじゃ、何がなんだかわからないでしょ」
「それは……そうですが」

 ダニールは渋い顔だが、マルーシャはミュシカを椅子に抱きおろし、さっさと工房へ出た。強い声で問いかける。

「どうしたの?」
「ああマルーシャ、大声ですまねえな」

 こちらを見たのはクジモだった。さすがに怒っているらしい。眉間にしわが寄っている。

「クリフトの奴、勝手ばかり言いやがって……」
「ごめんなさい」

 怒りで二の句がつげないクジモにマルーシャは頭を下げた。気持ちはものすごーくわかる。
 だが怒られたクリフトの方も怒っていた。ぷんぷん、という風情で唇をとがらせている。

「だからって許すわけないだろ! 借金が返せないならマルーシャを嫁に寄越せなんて!」
「へ?」

 父の言葉にマルーシャは間抜けな声で反応してしまった。だって意味がわからない。
 嫁?
 って、あの嫁か。結婚する、あれ。
 ――――えええっ男の人と!?

「どういうことでしょう?」

 大混乱のマルーシャの横に来て、ダニールが冷静な声で尋ねた。軽く自分の肩でマルーシャを隠し、かばう。
 視界をさえぎってくれた背中にマルーシャは落ち着きを取り戻した。なんだか頼りがいを感じる。そう、ダニールは仕事のやり取りならできる男なのだった!
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