かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
知らない人間が出てきてクジモはひるんだが、ここで引っ込むわけにもいかない。
「俺も金を返してもらえないと困るんだよ。だが親族のことなら、まだ少しは言い訳が立つ。だからマルーシャをウチの長男の嫁にもらえないかと」
マルーシャを振り向き、ダニールは抑えた調子で訊いた。
「あなたはその人と恋仲なんですか?」
「そんなことないです! 私、おばさんくさくてモテないって言ったじゃないですか」
「いやいやマルーシャ、それは家庭的ってことだろ? クリフトを支えて工房を切り盛りしてきたんだし俺は歓迎するね。うちの息子は地味だが、しっかり者なんだ。きっと似合いの夫婦になると前から思ってたんだよ。クリフトの面倒みてるばかりじゃ、マルーシャは一生嫁になんか行けないだろうが」
クジモが言い張った。クリフトは傷ついたが、その内容は正しいとも思う。
好き勝手な父に振り回されるマルーシャには浮いた話がまったくない。クリフトは言葉に詰まってしまった。
「お母さま――?」
かわいらしい声が沈黙を破った。
青い瞳を不安に曇らせて、台所からトトト、と出てきたミュシカはマルーシャに抱きつく。
「ああミュシカ。だいじょうぶよ」
寂しがり屋の幼女を安心させたくて、よいしょとマルーシャが抱き上げる。ミュシカはきゅ、と首にかじりついた。
「お母さ……って」
クジモはぎょっとした。
髪と瞳の色は違えどマルーシャに面ざしの似た、愛らしい子。マルーシャに娘がいるなんて聞いていない。
「彼女を嫁にというのは待っていただけませんか」
ミュシカを抱くマルーシャに寄りそい、ダニールは言った。
「僕はこの人を迎えに来たんです」
「お父さま」
ミュシカが伸ばす小さな手を取ってダニールがうなずく。
これはどう見ても仲の良い家族――夫婦と娘。クジモは自分がとんでもない横やりを入れていると誤解した。
「俺も金を返してもらえないと困るんだよ。だが親族のことなら、まだ少しは言い訳が立つ。だからマルーシャをウチの長男の嫁にもらえないかと」
マルーシャを振り向き、ダニールは抑えた調子で訊いた。
「あなたはその人と恋仲なんですか?」
「そんなことないです! 私、おばさんくさくてモテないって言ったじゃないですか」
「いやいやマルーシャ、それは家庭的ってことだろ? クリフトを支えて工房を切り盛りしてきたんだし俺は歓迎するね。うちの息子は地味だが、しっかり者なんだ。きっと似合いの夫婦になると前から思ってたんだよ。クリフトの面倒みてるばかりじゃ、マルーシャは一生嫁になんか行けないだろうが」
クジモが言い張った。クリフトは傷ついたが、その内容は正しいとも思う。
好き勝手な父に振り回されるマルーシャには浮いた話がまったくない。クリフトは言葉に詰まってしまった。
「お母さま――?」
かわいらしい声が沈黙を破った。
青い瞳を不安に曇らせて、台所からトトト、と出てきたミュシカはマルーシャに抱きつく。
「ああミュシカ。だいじょうぶよ」
寂しがり屋の幼女を安心させたくて、よいしょとマルーシャが抱き上げる。ミュシカはきゅ、と首にかじりついた。
「お母さ……って」
クジモはぎょっとした。
髪と瞳の色は違えどマルーシャに面ざしの似た、愛らしい子。マルーシャに娘がいるなんて聞いていない。
「彼女を嫁にというのは待っていただけませんか」
ミュシカを抱くマルーシャに寄りそい、ダニールは言った。
「僕はこの人を迎えに来たんです」
「お父さま」
ミュシカが伸ばす小さな手を取ってダニールがうなずく。
これはどう見ても仲の良い家族――夫婦と娘。クジモは自分がとんでもない横やりを入れていると誤解した。