かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「ありがとうありがとうありがとう! 立て替えなんて助かるよー!」
「あ、いえ……」

 それは任務の遂行に必要と思っただけだ。マルーシャを助けるための経費なので問題はない。だが市場で言われたマルーシャ後妻説を補強するような真似をみずからしてしまい、ダニールは落ち込んだ。

「はいはいはい、ひとまず乗り切ったんだからウジウジすんな!」

 ニヤリとしながら出て来たイグナートは全員に戻るよううながす。そして台所に落ち着き直すクリフトにさっさと提案した。

「どうです? お父さんもファロニアに行かれたらいい。借金取りも追いかけて来ませんから安心安全」
「他に借金はないです! ……ないわよね、お父さん?」

 マルーシャはいちおう確かめる。クリフトは偉そうに言い切った。

「そんなものないよ、馬鹿にしないでくれ」
「信用がないから言われてるってわからないの?」

 またマルーシャの小言が始まるのをダニールがさえぎった。

「借金はともかく、ぜひクリフトさんも同道なさって下さい。娘さんを心配するのは当然ですから」
「あ……いや、まあな」

 クリフトは頭をかく。困ってしまった。
 ダニールが生真面目な男なのはわかってきたし、ミュシカや同行者夫婦もどうやら善人だ。侯爵は誇り高い人なので、約束を違えマルーシャを引き留め帰さないなんてことはしないとわかっている。だから、反対する理由はない。
 それにもう反対しなくていいかなと、ひと晩落ち着いてみたら思うようになった。

「……マルーシャのこと、どう見る? 〈春〉だと思うかい?」

 もし母親と同じ〈春〉ならば。
 アレーシャが気にかけていた故郷のこと、そしてマルーシャに流れる妖精の血のことに、ここらで向き合うべきなのかもしれない。

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