かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「――今日、外でお会いして感じた範囲では、可能性が高いかと」
「私、そうなんですか?」

 驚くマルーシャに視線を移し、ダニールはうなずいた。

「マルーシャさんは僕の使ったおまじないを感じ取りました。良い素質を持っているのだと思います。それにその時、髪が陽に透けて薄紅に輝いて見えました。元は淡い栗色なのに、です」
「私、赤毛ではないと思うけど」

 首をかしげるマルーシャに、ダニールは小さく笑った。

「妖精としての力の方向性みたいなものですよ。淡い花のような色は春のしるしです」
「ふうん……」

 マルーシャ自身は釈然としない。昨日、妖精の世界に出会ったばかりなのだ。
 ダニールは研究者の顔になって聞き取り調査を始めた。

「アレーシャさんから、何か教わっていませんか。おまじないでもなんでも」
「ああ、アレーシャがいつも歌ってたろ、わからない言葉で」

 横からクリフトが証言する。その歌についてはマルーシャにも心当たりがあった。

「ユーデル セ ドニア?」
「そう、それだ」
「あれを知ってるんですか!」

 父娘のやり取りに割り込んでダニールが大きな声をあげた。いつもの真面目な表情が崩れ、嬉しそうな顔にマルーシャは面食らう。すると膝の上のミュシカが口ずさんだ。

「――ユーデル セ ドーニア
   ヴィーテル バルミーナス――」
「ミュシカはやめなさい。危ないからね」

 制止するダニールにマルーシャは目を丸くした。

「危ない? お母さんは今日の幸せを願う歌だって」
「ああ、そう教わりましたか。それはそのとおりです。でも」

 これは、季節を言祝(ことほ)ぐ歌なんですよ。
 ダニールはそう言って瞳を輝かせた。

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