かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
季節を言祝ぐ。
つまりこれは〈春告げの姫〉としてアレーシャが儀式で歌うはずだったものなのだ。
「出だしは春夏秋冬どれも同じなんです。今ミュシカが歌った部分の意味はこうなります」
今日の日に幸あれ
風が我らを守り
「そして、光が我らを導く。大地はとこしえなり、と続きます」
「そう……そう教わりました!」
ダニールにより紐とかれる古い歌。幼い頃から母が聞かせてくれていたものだ。
古い古い言葉だから意味はそのうちね。そう笑った母は、教えてくれる前に病気で死んでしまったけど。
それが故郷ファロニアに伝わる、しかも春告げという特別な役目で歌うものなのだと知ってマルーシャは泣きそうになりながら微笑んだ。
「……大丈夫ですか」
マルーシャの顔がゆがむのを見てダニールが気づかった。
「はい……なんだか、嬉しくて」
マルーシャはエヘヘ、とごまかし笑いをした。母を思い出して涙ぐむなど、十八歳にもなって恥ずかしい。
「――母と、ファロニアがつながった気がしました。私は本当に妖精の端くれなんだなってびっくりしちゃって」
「端くれだなんて。あなたは侯爵家の末で、〈春〉かもしれない方ですよ」
「そんなたいそうなものではありませんけど、私やっぱりファロニアに行ってみたい」
「それは嬉しいです」
ダニールは了解を求めてクリフトに視線をやった。いつもちゃらんぽらんで自由に見える父親は、やや感慨にひたっているようだ。