かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「猫時計、好きなら持ってってもいいぞ」
「ちょっとお父さん!」
好評に気を良くしたクリフトがミュシカをそそのかし、マルーシャは慌てて止めた。イグナートがポリポリと頭をかいて視線を泳がせる。
「……さすがに馬車に載せらんないですよ、人数多いんで。屋根にくくるしかなくなりますけど」
「妙な物を輸出しないの! お祖父さんだって嫌がるわよ」
娘の抗議にクリフトはつまらなそうに肩をすくめた。
「いやあ、あの人はそんなに堅苦しくないから。心は頑固者だけど頭は柔らかいしね」
にらみつける娘に対し、クリフトはヘラヘラと笑う。
「侯爵っていってもお高くとまってないんだよ。帝政だった昔々に周りと足並み揃えて異民族と戦ったおかげでもらった爵位だとか。都合がいいから名乗り続けてるだけだって」
「……その歴史解釈はアレーシャさんが?」
ダニールが憮然として確かめた。
「ああ。間違ってたかな?」
「……おおむね合っています」
妖精学の専門家ダニールとしては、そのざっくりした認識にため息しか出ない。妖精の国を樹立した侯爵家の直系子孫、アレーシャなのに。
冴えない顔をされてマルーシャはおそるおそる尋ねた。
「……お母さん、まずいこと教えてます?」
「いえ、意外と大まかな方だったのかと感じただけです」
それは……否定できない上に、マルーシャも受け継いだ性格かもしれなかった。