かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「興奮してしまって、失礼しました……」
小さくなったダニールに謝罪され、マルーシャは吹き出してしまった。
元の背が高いので、小さくなられても見上げるのは変わらない。でもなんというか、可愛く思えたのだ。
「別に気にしませんよ。面白かったです」
「おもし、ろい?」
「研究者に優しい〈春告げの姫〉……!」
ダニールはやや傷ついたようだったが、イグナートはゲラゲラ笑った。ラリサも吹き出し、するとミュシカもつられて笑う。
「お父さまよかったね! おもしろがってもらえた!」
「良くはないと思うが……」
「そんな、私、悪い意味で言ったんじゃ」
「いえ気にしないで下さい」
失言にあわてるマルーシャと平静をよそおうダニールを、クレヴァ夫妻は意味深な視線でながめた。
この二人は意外と似合いかもしれない。ベルドニッツの町では住民からさんざん冷やかされたが、あながち的外れでもなかったのだろうか。
「とにかく、マルーシャさんがおまじないを使えたのは喜ばしいです。これからもいろいろやってみましょう」
「はい……たくさん種類があるんですか?」
「もちろんです」
やや調子を取り戻してダニールはうなずいた。
妖精たちは生活のあちこちでおまじないを使う。個人差があるのでほんのりしか効果が得られない場合も多いのだが、もう文化や習慣として根付いているのだ。
「自然から力を借りるもの、自然へと働きかけるもの、さまざまです」
「はあ……たとえば?」
これまでにマルーシャが見たおまじないといえば、迷子のユーリィを探し出したあれだけ。ダニールは研究者で教育者なのだ、きっとすごいおまじないを知っているのでは。
マルーシャが向けた期待のまなざしに、専門家であるダニールは――たぶん浮かれたのだと思う。やや大技を試そうと決めた。