かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
季節外れの花。
マルーシャの提案はこうだ。客の要望する花を注文に合わせて咲かせ、高値で売ればいいのだと。
「季節じゃないけど想い人の好きな花を贈りたいとか。葬儀にその人の愛した花を飾りたいとか」
「ああ、そういうのは需要ありそうね」
「なーるほど。見栄っ張りな金持ちのパーティーとかにもいいかもしれないな」
ラリサとイグナートがうなずいたのに、ダニールとミュシカはキョトンとしている。五歳児のミュシカがピンとこないのは仕方ないが、ダニールにもわからないのか。
「……妖精の力って、あまり商売に使っちゃ駄目なんですか?」
「あ、いや。そうではありませんが」
そこでラリサがため息をついた。生活感のない、浮き世離れしたダニールには実感できないだけなのだった。
妖精の力を仕事に活かすのはかまわないとダニールは言う。ただ、おまじないを人間に見せたり教えたりするのは禁じられているそうだ。
「妖精族の存在が知れ渡ると危険なので」
人族から敵視されたり、逆に利用するために陥れられたりするかもしれない。なので気をつけるようにと言われた。
つまり花を売るのはいいが、その入手方法を取りつくろわなければならないらしい。金銭的に苦労してきたマルーシャは考え込んだ。
「……そうなると面倒かも。簡単にはいかないのね」
「でもマルーシャちゃん、花を咲かせるのはやってみなよ。春の愛し子なら、そっちの適性があるんじゃないか」
イグナートが言い出した。そのおまじないをとんでもないと言ったくせに、勝手なものだ。だがダニールは真面目な顔になった。
「――それもそうか」
「え。だって難しいんでしょう?」
「いや難しい……のか? そうかな」
この件に関してダニールの見解はあてにならない。研究していたらできたという言い分は、天賦の才もあるだろうが努力を努力と感じない者の言い分だ。
「春は育む季節です。草花は春に芽吹くものが多いし、マルーシャさんには向いていると思います」
ダニールは期待するような口調だった。
でもマルーシャが妖精としての力を初めて感じたのは今さっき。まだ自分を信じられない。
「やってみませんか。教えます」
ためらうマルーシャを、ダニールは熱心に説得した。