かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~

寂しがり屋のお姫さま

  ✻


 休憩を終え、馬車を走らせているのはダニールだった。隣にはマルーシャ。外の景色を見ていたいとお願いして馭者台に席を手に入れた。ここは狭いのでミュシカは車内に残っている。これで話ができる。

「ミュシカは、冬告げの姫なんです」

 ダニールは小声で告白した。あまりにあっさり言われてきょとんとするが、その意味を理解してマルーシャは思わずダニールの顔をのぞきこんだ。

「だってまだ、五歳でしょう?」
「半年前、継いだ時には四歳でした」

 ダニールは苦笑いする。まあ異例のことではあったのだ。

「春の姫と似たような事情です。継ぐはずだった人が亡くなってしまって。元の冬告げの姫は高齢。それで早いけど、仕方なく」
「……そうですか」
「ミュシカは強い力を持っているし、きちんと導くためには早くから教育した方がいいという思惑もありました。さっきみたいに暴発すると困る」
「あれは、ミュシカの力?」

 自分は何をやらかしたのかと恐れたのだが、原因はミュシカの方だったのか。

「いえ。ミュシカとは相性の悪い術ですが、あんなことにはならないはずです。マルーシャさんの力とぶつかったからかと」
「う……」

 あっさり否定されてへこんだマルーシャだが、ダニールがとりなしてくれる。

「マルーシャさんからも力がほとばしるのを感じました。初めてにしては上出来だと思います」
「はあ……」
「制御できるようになればいいだけですよ」
「簡単に言わないで下さい」

 むくれてしまったマルーシャを、ダニールは不思議そうに見た。本当に他人の気持ちがわからない人だなと少し苛立つ。

 野原はまだ続いていた。森が少し近い。その木々を回り込んでいった先に次の町があるのだそうだ。
 木や草や、風の息吹。そんなものに包まれてマルーシャは、ふう、と息を吸った。落ち着く。

「――僕の弟、ルスランたちの失踪事件なんですが」

 ダニールは淡々と続けた。実はここからが本題だった。

< 45 / 144 >

この作品をシェア

pagetop