かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「新しい冬告げの姫はルスランの家族で、とても力が強い。そうどこからか漏れたんだと思います」
「え? 誰が四季の姫なのかは内緒なんですか?」
「はい」
「そうなんだ……」
「すみません。ファロニアでは当たり前なので言い忘れてました」

 そうなのか。
 この人に普通の会話力を求めてはいけないということをマルーシャは思い出した。妖精についての知識を得るのはなかなか難しいかもしれない。

「四季を告げる姫というのは影響力が大きいですから。季節をあるべき姿で招く、ということは、あるべからざる季節をもたらすこともできますね? 冬ではない時に冬を呼べば農業に打撃を与えてしまう。あるいは冬を強めても、いっそ呼ばなくても」
「……なんてこと」
「それでルスランとリージヤは連れ去られたんだと思います」

 ミュシカの母リージヤは、勘違いされたのだろう。本当の標的は、冬告げの姫ミュシカ。
 まさか〈冬〉が幼すぎる娘の方だとは思わずにリージヤが狙われた。妻を守ろうとしてルスランも巻き込まれたのだとダニールは考えている。ルスラン自身の仕事では目立った問題は起きていなかったのだ。

「冬告げ姫だと思われているのだからリージヤは絶対に無事です。でもルスランは……わからない」
「だいじょうぶよ」

 弟の安否を思って言葉を詰まらせるダニールを、マルーシャは励ました。根拠はないけれど、言わないわけにはいかない。

「夫に何かあったら言うことをきかせられないもの。丁重にもてなされてますって」
「……だといいのですが」

 なるべくのんきにマルーシャが言ってみせたのがわかってダニールは小さく笑い返した。

「こんなことミュシカは知らなくていい。内緒にしていて下さい」
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