かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「自分のせいだって思わせたくないんですね」

 幼い子にその罪の意識は酷だろう。絶対に秘密にするとマルーシャは約束した。

「ファロニアでミュシカを保護しておく手もありますが、どこから情報が漏れたのかわからないんです――弟たちには追跡のおまじないが効かなかったんですよ」

 迷子のユーリィを連れ戻した、あれだ。それが阻害されたらしい。ということは。

「妖精族の誰かがかんでいます。それが国内の者か、国外在住の者かもわからなくて。どこも安全じゃないなら、いっそ旅にと」
「大胆なことを……」
「僕はそこそこおまじないが使えますし、イグナートもわりと強いんですよ。万一の事があってもミュシカには特別なお守り(・・・)を持たせているので今度は追ってみせます」

 淡々と言う裏に決意が感じられた。弟夫婦の時にしてやられたことで、専門家としての誇りが傷ついたのだろう。

「はああ……」
「マルーシャさん?」

 大きなため息をついたマルーシャを、ダニールは心配そうに見た。

「あの……いろいろ事情を話さないままお連れしたのは申し訳なく」
「ほんとですよ」

 むー、としてダニールをにらむ。

「ますますミュシカを甘やかしたくなっちゃったじゃないですか! 私も事件の解決に協力します」
「マルーシャさん……いや、あなたには無事にファロニアへ到着してもらわないと」
「あ、まあそうですけど。途中で手がかりがあったら、てことです。だって私、ミュシカのこと大好きですもん」

 ふふ、と笑い、マルーシャは空を見上げた。
 これまでの町での暮らしが嘘のよう。世界は広くて、いろいろなことが起こっているのだ!

「ありがとうございます」

 やや困惑気味にダニールが礼を言う。この人とも、もう少しわかり合えたらいいんだけど。マルーシャは不器用な学者さまを横目でながめた。
 もうすぐそこに次の町、ラーツが見えてきていた。

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