かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
✻ ✻ ✻
午後早めの時間にラーツの町に到着できてマルーシャは安堵した。
初めての馬車の旅。自分の中の妖精の力。そして〈冬告げの姫〉と誘拐事件。たくさんのことがあって疲れてしまったのだ。
日がそこそこ高いうちに宿で男女別に部屋を取った。女性たちが入ったのは、二人で眠れる大きめの寝台と一人用の寝台が一つずつある部屋。小さな机と椅子が二脚あり、古びた木の床と壁。簡素だがホッと落ち着く。
だけどミュシカは元気いっぱいだ。ラーツの町にある有名な店の菓子が食べたいと言い出した。
「そんなものを食べに行ったら、お夕飯がお腹に入らないわよ?」
「でもお母さまぁ……」
往路では売り切れで買えなかったそうだ。今後はもうラーツに来ないかもしれないのに、とミュシカは主張した。
確かに、マルーシャが帰る時にミュシカは同行しない可能性も高い。その菓子はミュシカにとって今日だけの限定品だ。ならば仕方ないか。
「持ち帰りにして明日のおやつにしましょう。たしか包んでもらえるはずよ」
笑顔のラリサが外出を了承し、隣の部屋の男性陣へ伝えに行った。元気なミュシカを部屋に閉じ込めておく方が大変だとラリサは経験上知っている。ぴょんぴょん跳びはねるミュシカに手を取られ、マルーシャも宿を出るしかなくなった。
午後早めの時間にラーツの町に到着できてマルーシャは安堵した。
初めての馬車の旅。自分の中の妖精の力。そして〈冬告げの姫〉と誘拐事件。たくさんのことがあって疲れてしまったのだ。
日がそこそこ高いうちに宿で男女別に部屋を取った。女性たちが入ったのは、二人で眠れる大きめの寝台と一人用の寝台が一つずつある部屋。小さな机と椅子が二脚あり、古びた木の床と壁。簡素だがホッと落ち着く。
だけどミュシカは元気いっぱいだ。ラーツの町にある有名な店の菓子が食べたいと言い出した。
「そんなものを食べに行ったら、お夕飯がお腹に入らないわよ?」
「でもお母さまぁ……」
往路では売り切れで買えなかったそうだ。今後はもうラーツに来ないかもしれないのに、とミュシカは主張した。
確かに、マルーシャが帰る時にミュシカは同行しない可能性も高い。その菓子はミュシカにとって今日だけの限定品だ。ならば仕方ないか。
「持ち帰りにして明日のおやつにしましょう。たしか包んでもらえるはずよ」
笑顔のラリサが外出を了承し、隣の部屋の男性陣へ伝えに行った。元気なミュシカを部屋に閉じ込めておく方が大変だとラリサは経験上知っている。ぴょんぴょん跳びはねるミュシカに手を取られ、マルーシャも宿を出るしかなくなった。