かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「……やはり似ています」
「従姉妹同士だしな……あのお姉さんっ子のリージヤが、結婚して母親になったのかぁ」

 クリフトはバツが悪そうにつぶやいた。
 ファロニア侯国を訪れアレーシャと恋をした頃を思い出すと懐かしい。だがその末に、アレーシャは故郷との縁を断つはめになってしまったのだ。

 ダニールとミュシカが暮らす妖精族の秘密の国、ファロニア侯国。
 人族と変わらぬふりをしながらその地を治めるのはファロン侯爵、つまりマルーシャの祖父だそう。

「お母さん、領主さまの娘だったのね……なのに親と縁を切ってここで暮らしてたの? 信じられない、お父さん何しでかしたのよ!」
「ちゃんと結婚の申し込みはしたよ! そしたら侯爵閣下とアレーシャが喧嘩しちゃったんだ。それきり物別れでさ……」
「侯爵閣下は今、自分も意固地になっていたと後悔していらっしゃいます。アレーシャさんとの再会はならずとも、忘れ形見に気持ちを伝えたいと。それでお迎えに来ました」

 ダニールは淡々と用件を伝える。それをフーンとながめながら、クリフトはブツブツ言った。

「だけどどうしてミュシカときみが使者なんだい? 子連れでそんなの変だと思うんだが」
「……実は、弟夫婦の失踪事件の調査も兼ねた旅なので」
「ミュシカのご両親か」
「弟は僕の実家の古物商を継いでくれていまして。商談のためにバルテリス王国へ旅行に出たんです」
「ほう、バルテリス」

 それはマルーシャの暮らすクローシュ王国とファロニアの間にある大きな国だ。文化も豊かだが経済・軍事的にも隆盛を誇っている。

「その旅には僕も同行していたのですが、街で別行動の間に弟たちが……こちらに来るにもバルテリスは道すじにあたりますので、捜索しながら来ました」

 そこでミュシカがイヤイヤしながらマルーシャの胸に顔をうずめる。五歳の子にはつらい話だろう。
 マルーシャはきゅ、と幼女を抱きしめた。

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