かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
オシュ アン イディ イディ(痛いの痛いの 飛んでいけ)!」

 マルーシャの手のひらが温かくなった。
 ふわ、と何かがあふれる。やった本人も驚いたが、そばにいたラリサもそれを感じ、ハッとなった。

「……いたくない」

 女の子がきょとんとする。いきなり痛みがなくなってびっくりしたようだ。
 マルーシャはうろたえた。
 これは、母から教わったおまじない。でもこれまでは痛みが消え失せるようなことはなかったのに。

「ああら、おまじないが効いたのね。でも傷はあるんだから、おうちに帰ったら手当してもらうのよ」

 ラリサは何食わぬ顔で子どもたちを遠ざけた。兄たちがブツブツ言いながらも妹の手を引いて帰ることに安心しつつ、ぼう然とするマルーシャを振り向く。

「今の……妖精のおまじないよ」
「……子どもの頃お母さんに習ったんだけど」
「きれいに効いたわね」

 マルーシャは自分の手のひらを見つめた。どうしていきなり。

「お母さまのおまじない、とってもやさしかったねえ」

 ミュシカがぎゅ、と抱きついた。ほめてくれているのかもしれない。

「私、おまじない使えるのね……」
「お母さまのちから、つよいよ?」

 当然の顔で言われてもいきなりのことだ。よくわからなくてマルーシャは首をかしげた。

< 50 / 144 >

この作品をシェア

pagetop