かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
そしてマルーシャが歌詞の意味を教えてもらっていると、馭者台のイグナートから休憩の声がかかった。起こされたミュシカはすっかり元気になっていて、「おひるごはん!」と馬車から飛び降りる。
そこはタタという村の端だった。
薄曇りの空の下、広がるのは刈り取られた小麦の畑。秋の種まきのために耕されているところもある。手前は野原で、ここに家畜を放しておくのだろう。ぐるりと柵が見えた。
「――気持ちいい!」
道端から野原に入ったところに布を敷く。風にはためきそうなのを慌てて座って押さえ、マルーシャはそんなことも楽しかった。
軽食の詰まったバスケットは宿で作ってもらってきた。みんなが一斉に手を出す。サンドイッチを頬張りご機嫌のミュシカに〈春〉の歌を勉強していたと伝えたら、座ったままピョンピョンされた。
「お母さまうたってたの? わたしもききたかった」
「いい子守唄だったでしょ? ぐっすり眠ってたもん」
「じゃあ、わたしもうたう!」
宣言したミュシカはすっくと立ち上がった。それはマルーシャも聴いてみたい。でもミュシカは、歌うと嬉しくなって力をいっぱいに解放しかねないのだそう。ダニールは苦笑いで禁じた。
「やめなさい。この村に冬が来る」
それは一大事だ。
吹き出したマルーシャだったが、ふと野原から出てくる少年に気づいた。
向こうもピクニック中のこちらに目をとめた。村に戻るためにすぐ脇を通るのだが、表情は強ばっている。よそ者を警戒しているのだろうか。
「お兄ちゃん、こんにちは!」
ニコニコと挨拶するミュシカを、少年は無視した。なんだか悲しそうに見えた。
「あの、ごめんなさいね、突然」
ぶしつけを詫びるマルーシャたちの団らんをチラリとして、少年はぶっきらぼうに言い捨てた。
「邪魔だからどっか行けよ。もうすぐ葬列が通る」
そこはタタという村の端だった。
薄曇りの空の下、広がるのは刈り取られた小麦の畑。秋の種まきのために耕されているところもある。手前は野原で、ここに家畜を放しておくのだろう。ぐるりと柵が見えた。
「――気持ちいい!」
道端から野原に入ったところに布を敷く。風にはためきそうなのを慌てて座って押さえ、マルーシャはそんなことも楽しかった。
軽食の詰まったバスケットは宿で作ってもらってきた。みんなが一斉に手を出す。サンドイッチを頬張りご機嫌のミュシカに〈春〉の歌を勉強していたと伝えたら、座ったままピョンピョンされた。
「お母さまうたってたの? わたしもききたかった」
「いい子守唄だったでしょ? ぐっすり眠ってたもん」
「じゃあ、わたしもうたう!」
宣言したミュシカはすっくと立ち上がった。それはマルーシャも聴いてみたい。でもミュシカは、歌うと嬉しくなって力をいっぱいに解放しかねないのだそう。ダニールは苦笑いで禁じた。
「やめなさい。この村に冬が来る」
それは一大事だ。
吹き出したマルーシャだったが、ふと野原から出てくる少年に気づいた。
向こうもピクニック中のこちらに目をとめた。村に戻るためにすぐ脇を通るのだが、表情は強ばっている。よそ者を警戒しているのだろうか。
「お兄ちゃん、こんにちは!」
ニコニコと挨拶するミュシカを、少年は無視した。なんだか悲しそうに見えた。
「あの、ごめんなさいね、突然」
ぶしつけを詫びるマルーシャたちの団らんをチラリとして、少年はぶっきらぼうに言い捨てた。
「邪魔だからどっか行けよ。もうすぐ葬列が通る」