かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「葬列……」
マルーシャは少年を見つめた。かたくなな表情はそういうことだったか。きっと誰かの死を受けとめきれずにいるのだ。
「……ご家族がお亡くなりなの? 御愁傷さまです」
マルーシャが頭を下げると、少年の瞳が揺れた。
「俺の家族じゃ――姉さんの旦那だ」
「おはな、どうぞしなきゃ」
ミュシカが唐突に言った。訴える目が真剣だ。
「さよならのおはな、どうぞってしたの」
「そうか、ご近所の葬儀に花を手向けに行ったことがあったね」
ダニールが記憶をたどって言うと、少年は不意にきつい声で吐き捨てた。
「花なんて、咲いてない!」
そして走り去る。見送って、マルーシャは合点した。あの少年はたぶん花を探して野原に行ったのだ。義兄に贈りたくて。あるいは姉にそうさせてあげるために。
「花が見つからなかったのね……」
「そうなんですか?」
ダニールが不思議そうにする。こんな状況だがつい吹き出してしまった。ラリサとイグナートも苦笑いになる。何故わからないのか、本当に鈍感だ。
「絶対そうです」
マルーシャが断言してみせると、ダニールはうなずきながら言った。
「じゃあ咲かせましょう。マルーシャさん、お願いします」
「え」
「大丈夫、練習だと思って」
どうしてそうなるの。
昨日は土を吹き飛ばして終わった挑戦だ。尻込みするマルーシャを、ダニールは期待を込めて見つめている。そこに悪気はなかった。純粋におまじないが大好きなのだとヒシヒシ感じる。
ダニールの気持ちはわからなくもなかった。でも前科のせいで自信がないマルーシャは小さくため息をついた。
「また爆発するんじゃ……」
「怖いですか? じゃあ、何かあれば抑えられるよう僕が待機します」
「はあ……」
そこまで言われると断れない。