かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
✻
タタ村の教会には村人が集まっていた。
働き盛りの男の死。それを悼むために仕事の手をとめ、皆が沈痛な面もちだ。皆の気持ちに合わせるように空も暗く、雲が厚くなってきていた。
死者の義理の弟にあたる少年は、悲しみにくれる姉を思った。
貧しい中でも朗らかだった義兄。せめて花を手向けようと思った。なのに枯れ草の原にはそんなもの咲いていなくて、馬鹿な自分に嫌気が差した。
だけど今泣きたいのは姉だ。自分は涙などみせてはいけない。少年の頬はかたくなだった。
「おにいちゃん」
とぼとぼ教会に向かう少年を、幼い声が呼びとめた。先ほど村外れで見かけた女の子――手に、束ねたリュウキンカの花を握っている。
「これ、さよならのおはな」
「……こんなの、どこに」
目を見開く少年に、ミュシカは季節外れの花を差し出した。
「お母さまと、さがしたの」
小さな手から花束を受け取り、少年は一瞬くちびるをふるわせる。だが、涙はかろうじておさえた。
「……あり、がとう」
やっとのことで礼を口にすると、にっこりして女の子は駆け出していく。その先にさっきの人たちが待っていた。息を吐いた少年は、花を握り姉のところに駆け出した。
教会の入り口でふと立ちどまり、少年は振り返った。もう、花をくれた家族はいない。
どこにも咲いていなかった花を届けてくれた女の子。まぼろしだったのだろうか。
それでもいい。この花で姉が少しでも救われるなら。
少年は落ち着きを取り戻し、しっかりした足どりで教会へと入っていった。
村の空に、弔いの鐘が響いた。
タタ村の教会には村人が集まっていた。
働き盛りの男の死。それを悼むために仕事の手をとめ、皆が沈痛な面もちだ。皆の気持ちに合わせるように空も暗く、雲が厚くなってきていた。
死者の義理の弟にあたる少年は、悲しみにくれる姉を思った。
貧しい中でも朗らかだった義兄。せめて花を手向けようと思った。なのに枯れ草の原にはそんなもの咲いていなくて、馬鹿な自分に嫌気が差した。
だけど今泣きたいのは姉だ。自分は涙などみせてはいけない。少年の頬はかたくなだった。
「おにいちゃん」
とぼとぼ教会に向かう少年を、幼い声が呼びとめた。先ほど村外れで見かけた女の子――手に、束ねたリュウキンカの花を握っている。
「これ、さよならのおはな」
「……こんなの、どこに」
目を見開く少年に、ミュシカは季節外れの花を差し出した。
「お母さまと、さがしたの」
小さな手から花束を受け取り、少年は一瞬くちびるをふるわせる。だが、涙はかろうじておさえた。
「……あり、がとう」
やっとのことで礼を口にすると、にっこりして女の子は駆け出していく。その先にさっきの人たちが待っていた。息を吐いた少年は、花を握り姉のところに駆け出した。
教会の入り口でふと立ちどまり、少年は振り返った。もう、花をくれた家族はいない。
どこにも咲いていなかった花を届けてくれた女の子。まぼろしだったのだろうか。
それでもいい。この花で姉が少しでも救われるなら。
少年は落ち着きを取り戻し、しっかりした足どりで教会へと入っていった。
村の空に、弔いの鐘が響いた。