かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
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「わたしもぎょしゃだい、いきたいな」
「あら駄目よミュシカ。ダニールとマルーシャだけでいっぱいだもの」

 馬車は休憩したタタ村を出て、今夜宿泊する町パルバへ向かっていた。
 馭者を務めるのはダニール。そしてマルーシャがその隣に座っている。ラリサとイグナートは馬車の中でミュシカに入れ知恵を試みていた。

「なあミュシカ。ダニールとマルーシャちゃんが本当に結婚したら嬉しいか?」
「うん!」
「そうよね、お似合いだと思うの」
「うんうん!」
「だろ? だからあいつらのこと、俺らでいい雰囲気にしてやろうぜ」
「ふんいき?」
「この人って素敵だな、てお互いに思うようにするのよ。あと、なるべく二人きりにしちゃう」
「わあ! おもしろそう!」

 クレヴァ夫妻の悪のりは幼女を巻き込む。三人は、とても楽しげにヒソヒソ話をしていた。



 その外の馭者台では、マルーシャが速まる鼓動と戦っていた。
 折々こちらに向けられるダニールのまなざしが誇らしげに輝いていて、なんだかいたたまれない。花を咲かせるおまじないを二日で習得した生徒マルーシャが自慢なのかもしれなかった。
 だけどマルーシャにはその成果が本当に「とんでもない」のか実感がなくて困る。一般的な妖精の使うおまじないのことがわからないから。

 それよりも気になってしまうのは、先ほどおまじないを使った時のダニールの立ち位置だ。男性に免疫のないマルーシャにとってあれは異常事態だった。
 あらためて見るとダニールは格好いい。落ち着いた知的な男性というのが周囲にいなかったマルーシャにはまぶしい存在じゃないか! まあぜんぜん違う一面もあるのは知っているけど。
 なんだか意識してしまうのは昨夜ラリサに「オススメ」されたせいだろうか。

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