かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
見送ってマルーシャは大きくため息をついた。
「どうしようかと思った……ダニールさん怒ってたわ」
荷物を整理していたラリサが振り向いて首をかしげる。
「え、そう?」
「だって。口数が少ないし、私のこと見ないし」
「それ……マルーシャが濡れてたからじゃないの?」
サッとマルーシャは青ざめた。濡れたダニールの体に張りついていたシャツを思い出したのだ。
つまり、マルーシャも体の線が出るような状態だったということなのか。だから上着で隠されたのか。
「やだ……」
紳士的に目をそらされていただけなのだと気づいてマルーシャは死にそうな気持ちになった。
「お疲れ。おまえも乾いてんのか」
「二人まとめて乾かした。手間は同じだ」
男性用の部屋に引き上げたダニールを迎えたイグナートはニヤリと笑った。びしょ濡れのマルーシャから必死で目をそらしていたダニールの動揺には、もちろん気づいていたのだ。
「マルーシャちゃん、いい子だな」
「うん?」
「知らないパン屋のためにさあ……馬車から見ててどうしようかと思った。俺まで濡れる意味ないから行くのやめたけど」
「まあ、普通の判断だ」
ダニールは宿から貸してもらったタオルで上着の水をぬぐう。これは普通に吊るしておけばいいだろう。食堂で夕食を取るのなら、濡れた服とは別の物に着替えていないとおかしい。
「なんかさ、マルーシャちゃん小さくて可愛いと思わん? おまえの上着ブカブカだったな」
イグナートの言葉にダニールは眉をひそめた。
「……何を言い出す。ラリサに言うぞ」
「やめろって! おまえはどう思うよ」
「マルーシャさんは……すごい素質を持っているな」
「だあっ! 女の子として、て話だろ。おまえのこと受けとめてくれる子、なかなかいないよ?」
「……彼女は素晴らしい人だと思うよ、もちろん」
ダニールは硬質な声で言い切った。その硬さの意味をはかりかね、イグナートは友人を怪訝な顔で見つめていた。
「どうしようかと思った……ダニールさん怒ってたわ」
荷物を整理していたラリサが振り向いて首をかしげる。
「え、そう?」
「だって。口数が少ないし、私のこと見ないし」
「それ……マルーシャが濡れてたからじゃないの?」
サッとマルーシャは青ざめた。濡れたダニールの体に張りついていたシャツを思い出したのだ。
つまり、マルーシャも体の線が出るような状態だったということなのか。だから上着で隠されたのか。
「やだ……」
紳士的に目をそらされていただけなのだと気づいてマルーシャは死にそうな気持ちになった。
「お疲れ。おまえも乾いてんのか」
「二人まとめて乾かした。手間は同じだ」
男性用の部屋に引き上げたダニールを迎えたイグナートはニヤリと笑った。びしょ濡れのマルーシャから必死で目をそらしていたダニールの動揺には、もちろん気づいていたのだ。
「マルーシャちゃん、いい子だな」
「うん?」
「知らないパン屋のためにさあ……馬車から見ててどうしようかと思った。俺まで濡れる意味ないから行くのやめたけど」
「まあ、普通の判断だ」
ダニールは宿から貸してもらったタオルで上着の水をぬぐう。これは普通に吊るしておけばいいだろう。食堂で夕食を取るのなら、濡れた服とは別の物に着替えていないとおかしい。
「なんかさ、マルーシャちゃん小さくて可愛いと思わん? おまえの上着ブカブカだったな」
イグナートの言葉にダニールは眉をひそめた。
「……何を言い出す。ラリサに言うぞ」
「やめろって! おまえはどう思うよ」
「マルーシャさんは……すごい素質を持っているな」
「だあっ! 女の子として、て話だろ。おまえのこと受けとめてくれる子、なかなかいないよ?」
「……彼女は素晴らしい人だと思うよ、もちろん」
ダニールは硬質な声で言い切った。その硬さの意味をはかりかね、イグナートは友人を怪訝な顔で見つめていた。