かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~

 夕食のために着替えたマルーシャを見てミュシカが歓声をあげた。

「お母さま、かわいい!」
「あ、ありがと」

 マルーシャは少し照れる。
 身に着けたのはベルドニッツで新調したワンピースだ。シックな茶色は大人しい雰囲気だが、タックを寄せゆとりを作った胸、編み上げ紐で締めたウエスト、腰からふわりと広がるスカート。
 体の線をダニールに見られた懸念を考えると、もう少しゆったりした服にしたかった。でもラリサとミュシカがこれにしろと決めてしまったのだ。マルーシャを上から下まで検分し、ラリサは満足げだ。

「似合うわよ。ゴテゴテしない方がマルーシャの良さが出るのね。かわいいんだから、自信持って」
「かわいいなんて、近所のおじいちゃんおばあちゃんにしか言われたことないもの」

 マルーシャの訴えにラリサは声を上げて笑う。それは確かに信用できない評価だ。
 でもこの姿、ダニールへの売り込みはできると思う。体格はそこそこ大きいダニールの目に、小柄なマルーシャは女性らしく映るはずだ。だけどラリサは心配になってひょいとマルーシャの胴をさわった。

「この細さ。ちゃんと食べてる?」
「た、食べてはいるわよ。だけど無駄づかいできないし。文句はうちのお父さんに言って」
「ほんとに倹約家の主婦よね、マルーシャって」

 ため息をつかれたが仕方ない。事実そうなのだから。

「旅の間に少し肉をつけたいわ。とくに胸と腰」
「なんでそこ!?」
「いいじゃないの、マルーシャも女の子らしくなりなさい」

 姉貴分の威厳をこめて、ラリサは言い渡した。

「さあそれじゃ、お食事に行きましょう。マルーシャを育てなきゃ」
「わたしも、おおきくなりたーい!」

 ミュシカも決意を述べる。幼女が成長するのは喜ばしいことだが、マルーシャの場合は家畜の肥育に近いのではないかと微妙な気分だった。


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