かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
食堂でダニールとイグナートも合流し夕食にした。昼間は軽食で済ませているので温かいシチューが嬉しい。胃にしみていく。
あまり食べつけない煮込まれた肉を噛みしめていると、ガツガツ食べていたイグナートがふと手をとめた。
「マルーシャちゃん、たくさん食べてる? ゆっくりなだけ?」
「食べてますよ」
このままでは同行者全員から餌付けされるかもしれない。マルーシャは危機感におそわれた。今はいいが、朝や昼にあまり食べては馬車に酔ってしまいそうだ。
「――あのう、お食事中失礼します」
「あ、パン屋さん?」
横から遠慮がちな声がした。見れば先ほど屋根修理人の騒動があったパン屋の店主だ。わざわざ探しあてて挨拶に来たらしい。まあ見慣れぬ旅人など、宿にいて当然だが。
「お礼も申し上げず失礼を。おかげさまで職人は怪我で済みましたし、薪も確保できました」
「それはよかったです」
「ここにはウチのパンを卸してるんで。明日の朝のパンは奥さまのおかげですよ」
「……じゃあ美味しくいただきますね」
奥さま。
そう呼ばれてマルーシャの笑顔がぎこちなくなった。誰と夫婦のように見えたのか――流れを考えればダニールだろう。また妙に意識してしまう。
頭を下げて帰っていくパン屋を見送り、ミュシカがコソッと尋ねた。
「お母さま、さっきおまじないしたんだよねえ?」
「……バレた?」
「わたしわかるもん!」
雨よけのおまじないを使ったのを馬車にいながら感じたのか。さすが〈冬告げの姫〉なのだが、マルーシャのこともほめてくれる。
「お母さますごい!」
「ダニールさんが教えてくれたおかげだから」
「お父さまも、お母さまがおまじないできたらうれしいよ」
ミュシカは満面の笑みだ。しかし突然ダニールが思い詰めた口調になった。
「僕は――研究しているだけなんです」
あまり食べつけない煮込まれた肉を噛みしめていると、ガツガツ食べていたイグナートがふと手をとめた。
「マルーシャちゃん、たくさん食べてる? ゆっくりなだけ?」
「食べてますよ」
このままでは同行者全員から餌付けされるかもしれない。マルーシャは危機感におそわれた。今はいいが、朝や昼にあまり食べては馬車に酔ってしまいそうだ。
「――あのう、お食事中失礼します」
「あ、パン屋さん?」
横から遠慮がちな声がした。見れば先ほど屋根修理人の騒動があったパン屋の店主だ。わざわざ探しあてて挨拶に来たらしい。まあ見慣れぬ旅人など、宿にいて当然だが。
「お礼も申し上げず失礼を。おかげさまで職人は怪我で済みましたし、薪も確保できました」
「それはよかったです」
「ここにはウチのパンを卸してるんで。明日の朝のパンは奥さまのおかげですよ」
「……じゃあ美味しくいただきますね」
奥さま。
そう呼ばれてマルーシャの笑顔がぎこちなくなった。誰と夫婦のように見えたのか――流れを考えればダニールだろう。また妙に意識してしまう。
頭を下げて帰っていくパン屋を見送り、ミュシカがコソッと尋ねた。
「お母さま、さっきおまじないしたんだよねえ?」
「……バレた?」
「わたしわかるもん!」
雨よけのおまじないを使ったのを馬車にいながら感じたのか。さすが〈冬告げの姫〉なのだが、マルーシャのこともほめてくれる。
「お母さますごい!」
「ダニールさんが教えてくれたおかげだから」
「お父さまも、お母さまがおまじないできたらうれしいよ」
ミュシカは満面の笑みだ。しかし突然ダニールが思い詰めた口調になった。
「僕は――研究しているだけなんです」