かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
「はい? それはすごいことですよね?」
「でも暮らしに活かすのは難しい」

 ダニールは顔を上げ、マルーシャを見つめた。

「花を咲かせて商売にする可能性なんて僕は気づかなかった。村の少年が花を探していることも僕だけじゃわからなかった。パン屋を助けた方がいいかとは思ったけど、動くよりまず考えてしまった。それじゃ、いくら知識があっても駄目なんです」

 マルーシャはきょとんとなって食事の手を止める。この人は何を言っているんだろう。

「マルーシャさんの行動力を僕は見習うべきかと。情けない言い方で申し訳ありませんが」
「おまえが見習うべきは、マルーシャちゃんの生活力だと思うぜ?」

 苦笑いのイグナートがバシンと友人の背を叩いた。
 ダニールも行動だけならできる。調査研究にも必要不可欠な力なのだから。ただ学問に没頭し浮世離れしていたせいで応用がきかず、世間に対応できないのだ。

「そう……か」
「おう。旅の間は一緒にいられるし、おまじない教えたりもするんだろ。二人で理解を深め合えるじゃないか」
「迷惑でなければ、もちろん」

 おまじないの知識は豊富だが使いみちがわからない。そんなポンコツのダニールは真剣に考え込んでつぶやいた。

「僕も人の役に立てるでしょうか。マルーシャさんのように」
「私、そんなたいしたものじゃないです……!」

 真っ直ぐすぎる志を表明されてマルーシャは赤面した。感じたままに動き、話しているだけなのに、尊敬する口ぶりなどされても困ってしまう。
 そしてマルーシャの可愛らしさをアピールする作戦だったラリサとイグナート。この話の流れに首をひねってしまう。
 ダニールの感覚は、やっぱり捉えどころがなさすぎるのだった。

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