かりそめ家族、妖精の国へ ~寂しがり姫を偽母として甘やかしたらカタブツ学者さまに愛されました~
夕食後、なんだか疲れたマルーシャは早々に部屋に引き取ることにした。
食堂では酒も出してくれるらしく、居残りを宣言したイグナートがダニールを引き留めている。ラリサは付き合わないのかと思ったが、笑ってミュシカと手をつないでくれた。
「男どもに割り込む気はないわよ。他の客と仲良くなってワアワアするんだから、ほっとけばいいの」
「ダニールさんも?」
「あっちは黙々と飲んでるんじゃない? 初対面の人たちと和気あいあいできれば、生活力を見習いたいとか言い出さないってば」
「ははは……」
女三人のんびりすることにしたが、外ではまだ大雨が降っていた。たまに雷鳴も聞こえてくるのがミュシカは怖いようで、小さなランプだけの部屋でビクビクしているのがわかった。
「ミュシカ、もうねんねする?」
「あんまりねむくない。でもお母さまとおふとんにいる!」
こんな夜は誰かとくっついているのが心安らぐ。マルーシャも五歳のころは父母のベッドにもぐりこんで雷をやりすごしたものだ。
なのに今、ミュシカの両親は行方がわからない。元気にしてみせているミュシカだけど、本当はどれほど不安なことか。
「じゃあ洗面とお着替え、しよっか」
「はあい!」
ミュシカはとてもいい返事だった。
こんな幼い子から両親を奪った誘拐事件。いったい誰がなんのために引き起こしたのだろう。
一緒にふとんにくるまって暖まるうちにウトウトし、マルーシャは眠りに引きずり込まれていた。